日本人国内旅行消費額は「コロナ前越え」日本旅行の不正発覚でJATAへ総点検指示、和田長官会見

  • 2023年5月17日

 観光庁の和田浩一長官は5月17日に会見を開いた。冒頭では今年の1~3月期の旅行・観光消費動向調査の速報について報告を行い、1~3月の日本人国内旅行消費額は4兆2331億円となり、前年同期比1.8倍、2019年同期比で0.5%増を記録した。2020年以降では初めてコロナ前の水準を上回ったが、その中で宿泊旅行消費額が3兆4469億円2019年同期比6.1%増と伸びを見せた。一方で、1~3月の日本人国内延べ旅行者数は1億13万人で、こちらは2019年同期比17.1%減となり、消費額の増加は日本人国内旅行1人1回当たりの旅行支出(旅行単価)増加が影響したようだ。1~3月期の旅行単価は42,277円/人で2019年同期比21.2%増を記録した。3月31日に閣議決定された新たな観光立国推進基本計画の中では国内旅行消費額を早期に20兆円にすることが1つの目標となっており、和田長官も「今後の動向に引き続き注視したい」と述べた。

 続いて、4月14日に行われた韓国の朴普均(パク・ポギュン)文化体育観光部長官と齊藤国土交通大臣との会談で行われたポストコロナにおける日韓観光交流の促進について問われた和田長官は「観光は双方向の民間交流を通じて相互理解を深めていくために重要な役割を果たすもの。観光庁としても日韓相互交流の拡大に努めたい。」と述べた。4月14日の会談では、両国間の相互交流人口を本年のできるだけ早期に2019年レベルまでの回復を目指すことや、両国で地方の魅力について情報発信を強化し交流を促進することなど、取り組むべき方向性について合意が行われた。観光庁では現在、韓国側と協力して上記の方向性に基づく具体策について検討が行われている。

回復見せる訪日旅行者数とオーバーツーリズムの懸念

 4月の訪日外国人旅行者数は194万9100人を記録し200万人に迫った。この数字は2019年同月比で66.6%で、夏ダイヤに合わせた増便などが要因として挙げられ、国際線定期便は現在コロナ禍前の約6割まで回復している。

 一方で、増加する外国人旅行者数に伴い懸念されるオーバーツーリズムについて問われた和田長官は「これまで進めてきたデジタル技術を活用した混雑状況の可視化やSNSでのマナー啓発などに加え、観光再始動事業や地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり、JNTOによる地方プロモーションなどによる需要分散と持続可能な観光地づくりに資する政策を組み合わせながら対応していく必要がある。」と見解を示した。

日本旅行の不正発覚に伴いJATAへ点検指示も

 先日新たに発覚した日本旅行の全国旅行支援事業愛知県事務局運営での不正について問われた和田長官は「全国旅行支援事務局の受託業務の原資は国民の皆様からの税金であり、過大請求は断じてあってはならず大変遺憾。こういった事案は業界全体の信用低下に繋がる。」と述べた上で、日本旅行へは本件の事実関係の調査及び原因の究明と再発防止策の検討、また他の受託業務にて同様の事案がないかの調査について指示を行ったと明かした。

 また業界で不正事案が続いている現状を考慮し、日本旅行業協会(JATA)へも協会員の受託業務の総点検の実施を依頼するとともに、コンプライアンスの更なる徹底に必要な方策の検討を依頼したという。観光庁としては業界全体と連携しながらコンプライアンス遵守の徹底を行っていきたい考えだ。