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海外旅行の現状や本当の競合は?-RT Collection 柴田真人氏

 続いて、Google Trendsのデータを共有します。データは直近1年間のデータで、キーワードは「ハワイ 旅行」「シンガポール 旅行」「タイ 旅行」「モルディブ 旅行」の4つになります。

■Google Trends - 「ハワイ 旅行」

■Google Trends - 「シンガポール 旅行」

■Google Trends - 「タイ 旅行」

■Google Trends - 「モルディブ 旅行」

 データを確認するとそれぞれのキーワードごとの検索需要の人気度の動向がわかります。「ハワイ 旅行」は一進一退が続いていますが、直近一年間では2022年5月上旬が人気度の最高値になり、年始にも伸びを見せています。「シンガポール 旅行」と「タイ 旅行」はほぼほぼ同じような緩やかな右肩上がりになっており、共通しているのは「シンガポール 旅行」は今年の年始の1週間、「タイ 旅行」は今年の1月下旬から2月上旬というように今年に入ってから人気度の最高値が来ています。直近の検索需要が一番高いというのは良い傾向にあると思われます。「モルディブ 旅行」は昨年8月末から9月上旬に人気度の最高値が来ており、上がったり下がったりを繰り返しています。

 検索需要の人気度のデータから判断すると、シンガポールやタイは今がまさに情報発信の強化をするべきタイミングに来ています。マーケットが30%くらいの回復状況であれば一歩踏み出せない人が多くいる状況というのが予想できるため、入国の際の条件や現地の様子、ツアーのメリットや安心面、ホテルや観光地の最新情報などを再度丁寧に伝えていくことや海外の事業者と協働しながらそれらを見せていくことが大切になってきます。

 また、「モルディブ 旅行」のように検索需要の人気度が同じような水準で続いている場合でもマーケットの回復状況が50%近くまできているのであれば、直近にツアーに参加した人たちのフィードバックやアンケート結果を掲載したり、ツアーを購入している人がすでに多いということを伝えていくことが効果的です。例えば、モルディブにハネムーンに行っている人がたくさんいる、じゃあ私も行ってもいいんだというような雰囲気作りです。

 今回2つのデータを簡単にまとめてみましたが、マーケットの動向や消費者の行動を調べてみるのはとても大事ですし、その動向に応じてアクションを起こしていくことも大事です。データを確認することで今はどこに注力するべきかもわかってきます。この数年で海外旅行への意欲がなくなった人や国内旅行を選択した人もたくさんいますが、海外旅行に行きたい人にとって、海外旅行の競合は国内旅行ではなく、海外への不安や情報量の少なさ、私は海外旅行していいのかなという周りの目線だったりします。そういったボトルネックになっている部分を旅行会社が1つでも少なくしていくことが改めて大事だと思っています。

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。