マーケティング思考が必要な旅行会社の社員-RT Collection 柴田真人氏

  • 2022年12月13日

営業や企画担当者にもマーケティング思考が必要な理由

 そんな旅ブログの記事添削をしていると、旅行業界でも同じようなことがあるなと思いました。

 例えば、海外旅行の事例でいうと、ラグジュアリーホテルのパッケージツアーを価格訴求の強いメタサーチに掲載しているのをよく見ます。もちろん想像の通り、全く受注できない、あるいは問い合わせすら来ないという状況になります。これは明らかに広告媒体の選定が間違っている例です。ラグジュアリーホテルのパッケージツアーのターゲットをどのような旅行者で考えているのか、どのようなデータをもとにその広告媒体を選んでいるのか、その広告媒体がターゲットにしている旅行者を本当に集めてくれているのかなど、このような手順や考えがゴソッと抜け落ちていることがあります。もしその広告媒体がターゲットにしている旅行者を集めていない、あるいはアプローチできていないのであれば、その広告媒体を使う意味はなく、オウンドメディアに注力する方が良いです。

 旅行会社で働いている社員が、マーケティングの基礎を学ぶ機会は滅多にありません。例えば、新入社員の入社後の研修は2レターや3レター、約款、航空券の予約の取り方などを学びますが、その研修でマーケティングの基礎を学ぶことはありません。社内では販売推進部のような部署に所属している社員だけが、例えば、Webマーケティングの知識に精通している、というようなことはもちろんあって、担当している業務にインターネット広告があればWebマーケティングの知識は必須です。一方で営業や企画担当者がWebマーケティングの深い知識が必要かといえば、あったことに越したことはないですが、深い知識までは必要ありません。しかし、セグメンテーションや価格戦略などのマーケティングの基礎となる部分は必ず理解しておいた方が良いです。旅行会社は良くも悪くも「経験」や「感覚」に頼っている人が多く、もちろんその経験や感覚が活きる時もありますが、変化の速度が速い観光業界ではマーケティングの基礎を理解しておくこと、そしてマーケティング思考で業務に取り組むことは一部の社員だけではなく、全社員に必要だと最近は常々思います。

 新卒採用の再開も始まっている観光業界。来年の春には観光業に携わる決心をしてくれた若い世代がやってきます。人材の底上げという意味でも、新入社員や既存の社員に対してマーケティングの基礎を理解する機会を与えていきたいものです。個人の旅ブロガーですらマーケティングの知識が必要とされています。業種問わず、社員全員のマーケティング思考が必要となっています。

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。