マーケティング思考が必要な旅行会社の社員-RT Collection 柴田真人氏
第24回目のコラムは、「マーケティング思考が必要な旅行会社の社員」をテーマに書いてみたいと思います。
旅ブロガーにも求められるマーケティング知識
旅行メディアを運営していると旅ブロガーの方々と知り合う機会や交流する機会がよくあります。旅ブロガーといっても旅行業界の方はほとんどいなくて一般の方ばかりなんですが、趣味でやっている人もいれば、副業としてやっている人もいて様々です。それぞれ運営している旅ブログを拝見して投稿されている記事を読んでみると、とても詳しくホテルの紹介をしたり、観光地やモデルコースの紹介をしていて、ホテル選びや観光地の回り方の参考になることが多いです。
そんな旅ブロガーの記事を添削する機会があります。添削する記事は、ホテルの宿泊レビューの記事やレンタカー利用のモデルコースの紹介記事、トラベルグッズの紹介記事、観光地の食事やレストランの紹介記事など、国内旅行の記事もあれば、海外旅行の記事もあります。基本的には旅行をせずに、または体験をせずに執筆している記事は個人的に興味がないので添削対象にはせず、実際に旅行をして宿泊をしたり、実際に体験をして一次情報をしっかりと得て記事を書いているものを対象に添削しています。
一次情報がある記事は、体験をもとに内容を書いていることもあり、説得力があるのはもちろん、内容の深みもあります。記事添削では、記事の構成や見出しの確認、画像の使い方、テーブル(表)やリスト(箇条書き)の使い方、検索キーワードの選定など、いろんな項目をチェックします。少し構成を変えるだけでとても読みやすい宿泊記になったり、テーブルの使い方1つでその記事の要点がわかりやすくなったりします。
旅ブログを1つ運営するにしても、扱うジャンル選びやサイト構成、内部リンクの導線など考えなければならないことが山ほどあります。個人の旅ブロガーは記事の執筆を同時に行っている人がほとんどで、SEOやライティングを勉強しながら、自分でブログ運営のディレクションを同時に行い、そして記事も執筆するという相当な量の作業を行っています。朝5時に起きて作業をして、日中は会社に行って仕事をして、夜にまた作業をするみたいな人もいるので本当感心します。
記事添削をしていると旅ブロガーによっては、ライティングをしっかりと勉強している旅ブロガーもいれば、記事の見出しの使い方や記事構成が上手な旅ブロガーもいて、良質な記事に出会うことがよくあります。しかし、そんな良質な記事でも「読まれない」ということが多くあります。もちろんこれには、Googleの検索結果で上位表示ができていないなどSEOに関わる部分もありますが(ここでは詳しいことは割愛します)、そういった旅ブロガーに共通して欠けていることが1つあります。
それは、マーケティングの基礎の知識です。
要は、良質な記事の内容でも、その記事が本来ターゲットとすべき読者層ではなく別の読者層へ発信してしまっていると、「読まれない」という状況になります。ブログ運営の場合は、検索キーワードがとても重要になりますが、その検索キーワードごとにターゲットがあります。旅ブログの記事が旅行者全てに合うということはなく、市場にはどういった旅行者がいるのかなどを調べて、特定の旅行者に向けて発信しなければなりません。そんな旅ブロガーにセグメンテーションやターゲティングのマーケティングの基礎の知識を伝えると「そういった考え方があるんですね」や「そんなデータの調べ方は知らなかった」など新しい気付きの発見があり、考え方が180度変わるきっかけとなります。つまり、マーケティング思考で作業をするということはとても大事です。
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