宿泊事業者の「便乗値上げ」説への反論~更なる単価アップをすべき理由 宿屋大学 近藤寛和氏
稼働を犠牲にしてでも単価を上げれば利益は増える
ホテル企業のなかには、人材不足で現場が疲弊しているのに、稼働100%を盲目的に目指している企業も多くありますが、これになんの意味があるのでしょうか。短期収益は上がりそうですが、現場の疲弊と顧客不満足を助長するだけで長期ビジネスを考えたら1つも良いことはありません。稼働を犠牲にして単価向上を重視すべきではないでしょうか。
簡単な質問をしたいと思います。
【問題】
通常平均単価(ADR)8,000円で平均稼働率75%の100室の宿泊主体型ホテルがあるとします。下記の2つの売り方をした場合、ともに売上は60万円となりますが、さて、残る利益の差額はいくらになるでしょうか(1室当たりの販売コストは2000円)。
(1)ADR 6,000円、稼働100%
(2)ADR 10,000円、稼働60%
【回答】
1日当たりの販売コストは・・・
(1)100室×2,000円=20万円
(2)60室×2,000円=12万円
よって、(2)のほうが「8万円@1日」も多く利益が残るのです。月額なんと240万円! 年額なんと2880万円の利益差になるのです。
部屋を埋めようとして安売りするのは、もう止めませんか。安売りは、「その程度の価値です」と言っているようなものです。「安いこと=善」、「高いこと=悪」という意識を捨て、価格維持のための努力ではなく、高い価値を創るために努力しましょう。消費者は、こだわりたいこと、自分にとって意味があるものには、高くてもお金を払うのです。
「価格」は「価値」に従う。価格は、「プライド」であり、「自覚」。私はこう考えます。
近藤寛和
1967年生まれ。ホテル業界の専門出版社であるオータパブリケイションズで記者を18年勤めた後に起業し、ホテル・旅館のマネジャーや経営者の育成を目的としたビジネススクール「宿屋大学」を運営。東京YMCA国際ホテル専門学校講師、立教大学観光学部兼任講師も務めている。
1967年生まれ。ホテル業界の専門出版社であるオータパブリケイションズで記者を18年勤めた後に起業し、ホテル・旅館のマネジャーや経営者の育成を目的としたビジネススクール「宿屋大学」を運営。東京YMCA国際ホテル専門学校講師、立教大学観光学部兼任講師も務めている。