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海外旅行は行きたいけれど、最初の一歩を阻むのは「不安」、Z世代が旅行会社に求めるものは?

コロナ明けの初海外は王道の旅行先が人気
手軽さよりも丁寧なケアを重視

 翌23日に行われた東洋大学国際観光学部の学生によるパネルディスカッションでは野々村氏がモデレーターを務めた。冒頭、野々村氏は、Z世代向けの海外旅行商品造成のポイントとして「Z世代は海外旅行の初心者である」点を意識する必要があると説いた。

野々村氏

 「海外旅行の初心者には多くの選択肢から1つを選ぶことがストレスになるため、各エリアに1つなど敢えて数を絞ったプランを打ち出し、分かりやすい料金表示、ツアーのイメージが沸くようなたくさんの写真、シンプルな予約導線が重要」。また、トラブルへの不安もハードルになるため、「タビマエ・タビナカ・タビアトまで、丁寧すぎるほどのケアが必要。スタッフお墨付きのホテルやレストランのみで構成されたツアーや日系エアラインの確約、行程や持ち物などの細かいケアやLINEを利用した相談など、金額が多少上がっても万全のサポート体制をアピールすることが差別化につながる」と分析した。さらに、まだ利用するサービスが固定されていないZ世代からは、広告を求める声もあるという。海外ツアーの広告を見ると「もう海外に行っていいんだ」という前向きな心理が働き、それが決め手になることもあるという意見も紹介し、Z世代へのアピールの重要性を強調した。

【登壇者】
東洋大学国際観光学部 門脇健太さん
同 中戸川莉子さん
同 笹原凛さん
同 望月晴佳さん

【ファシリテーター】
バリーズCEO/Z世代トラベルプロジェクト プロデューサー 野々村菜美氏

思い出に残っている国、行きたい国は?

望月さん

 パネルディスカッションはまず「これまで訪れた国でどこが良かったか」を質問。望月晴佳さんは高校時代に短期留学したイタリアのローマ、門脇健太さんは前週までゼミの研修で1週間滞在したフランスのパリを挙げた。両者とも日本とは異なる街並みや現地の食べ物が記憶に残っているという。野々村氏は調査結果でも「食の美味しさ」が旅行先を選ぶ理由の第2位に入っていたことに触れ、「ミレニアル世代と同様、Z世代でも食は旅行先を決める重要な指標になることを改めて感じた」とコメントした。

 「今どこの国に行きたいか」という質問では、中戸川莉子さんは友人が住むタイを挙げた。高校の卒業旅行で訪問する予定だったが、新型コロナウイルスの流行で断念したといい、「安価に行けるビーチリゾートや世界遺産などの有名観光地も多数あることも魅力。タイ語が話せて現地の事情を知っている友人がサポートしてくれるのも心強い」と語った。

 コロナ禍で家で過ごす時間が増え、韓国ドラマの鑑賞が趣味になったという望月さんは、「聖地巡礼で韓国の定番スポットを巡ってみたい」。韓国に興味を持ったのはドラマだったが、実際に旅行してみたいと思ったきっかけはInstagramだという。「友人のストーリーやリール動画を見て行ってみたいと考えた。ハッシュタグ検索やスポットで検索をかけて、行きたい場所や食べたいものをアカウントに保存することも趣味の1つになっている。日本からのアクセスもよく、旅費も比較的安く抑えて満喫できるのも魅力的」。調査結果と同じく、円安の影響もありアジア圏の人気は高いようだ。

 野々村氏はInstagramの影響力の強さにも注目した。「ミレニアル世代では旅行の意思決定で重要なツールとしてInstagramが1位だが、ここはZ世代も同じ。静止画ではなく短尺でまとめられたリール動画が更に影響力を増していると感じる」。一方でTik Tokはどうかと尋ねると、笹原凛さんは「Tik Tokは見るだけのツール。強く影響を受けたり行動を起こすのは中高生がメインだと感じる。旅行コンテンツに限らず、消費行動に出ることは難しいのではないか」と答えた。中戸川さんも「大学生が見るのはInstagramが8割、Tik Tokが2割くらいだと思う。Tik Tokはダンスや面白いネタなど、エンターテインメント要素の強いコンテンツを見る印象がある」といい、いずれも旅行とは直接結びつかないのではないかという回答だった。

海外旅行の予算

門脇さん

 海外旅行の予算を尋ねると、門脇さんと笹原さんは10万円から20万円と答えた。「パリの研修も20万円を軸に検討した。家族にも相談しやすい値段で、今回は父に借りたが、友人には全額親が負担したり、半分援助してもらった人もいた」(門脇さん)。2人とも旅行には貯金やバイト代を充てるが、現地で発生する食費やお土産代などは親から援助してもらえることもあるという。野々村氏は調査結果も踏まえ、「20万円がボーダーラインになってくる。これ以下であれば前向きに検討ができるという価格帯ではないか」とコメントした。

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