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海洋国・日本の海辺の魅力を世界に発信-シークルーズ代表取締役 瀬崎公介氏

  • 2022年10月11日

「水辺」を軸とした多角経営
インバウンド誘客にはSNSを活用

-直販主体を前提とした場合、世界に向けてどうアプローチし、どのようにして自社の予約サイトまで誘導しますか。

瀬崎 シークルーズは船会社としては比較的早く、十数年前からパンフレットや自社サイトの多言語化に取り組み、5年ほど前から5言語に対応しています。その実績もあって口コミがかなり強く、高い知名度があります。JNTOや九州観光機構と連携し、海外のテレビ番組などに積極的に協力してきた成果もあったと思います。

 いずれにせよ宣伝広告費はゼロ。それでもコロナ禍前は年間数万人のインバウンドを集客してきました。今後も個人客を主体に、SNSを活用し口コミ重視の情報発信をしていきます。インバウンド復活へ向けて7月には台湾人社員を2人採用しました。

-今後強化していく事業や新規事業の計画について教えてください。

瀬崎 交通と体験に関する事業を持っていることから、事業間のシナジー効果を高めるため2019年7月から宿泊事業に参入しました。コロナ禍により観光という発想だけでなく地域の交流ビジネスという形で垣根がなくなってきた印象です。これまでのように単なる観光だけを見るのではなく、仕事のついでのワーケーション需要や、友人・知人を訪問する需要も取り込んで行けばいい。ナチュラルな形で天草を訪れてもらう流れを作りたいと思います。

 私たちは海辺や川辺といった水辺にこだわっています。日本は海洋国家として全国に魅力的な水辺があります。ですから天草に限らず全国でその魅力を発掘し、誘客できる事業展開を構想しています。

-観光の需要回復に伴い人手不足が懸念されています。人材採用の方針や手法についてはどのように考えていますか。

瀬崎 人手が足りないからといって「給料をこれだけ出すから来て」だけでは厳しいでしょう。また人材を安く使おうという発想が観光事業者の一番悪い点です。「この人手不足のなかで、この給料でこんなに長時間拘束する職場」に誰も来るはずがないと観光業界の経営者たちが気づかないのはなぜでしょう。

 技能実習生をアジアから連れてくれば何とかなるという発想もおかしい。短期ならともかく、円安が進み各国の所得水準も上がっているなかで、すでに技能実習生制度も曲がり角に来ています。外国人も同じ人間として適切な水準の待遇で雇用するのが当然だし、そもそもそこで働いてみたいと思える職場を作らない限り問題は解決しません。私たちのような田舎の小さな企業が、上場企業並みの待遇を用意するのは難しいにしても、最低限必要な当たり前のレベルの待遇をきちんと提案して、働いてよかったと思われる企業づくりをしなければと考えています。

-トラベルビジョンの読者にメッセージをお願いいたします。

瀬崎 2023年はいよいよ観光業にとって明るい年になるはずですし、そうでなくては困ります。日本を取り巻く環境は厳しさを増していますが、日本には世界のどこにも負けない観光資源と観光商品があります。これを安売りせず、数を追わず質を追い、観光業界として経済的な合理性のある取り組みを、皆さんと一緒にしていきたいと思います。

-ありがとうございました。