海洋国・日本の海辺の魅力を世界に発信-シークルーズ代表取締役 瀬崎公介氏

  • 2022年10月11日

「水辺」を軸とした多角経営
インバウンド誘客にはSNSを活用

 熊本県上天草市のボート免許教習所を前身とするシークルーズは、マリーナの運営や遊覧船事業、定期航路事業などに事業分野を広げ、コロナ禍中の昨年にはグランピング事業にも乗り出した。瀬崎公介代表取締役(崎はたつざき)は、事業対象エリアを「水辺」と定めたうえで日本の海辺・川辺の魅力を世界に向けて発信していくという。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

瀬崎氏。インタビューはオンラインで実施した

-はじめに自己紹介からお願いいたします。

瀬崎公介氏(以下敬称略) 熊本県の天草出身の45歳です。京都の大学を卒業してからUターンして2001年に父が経営するシークルーズに入社しました。その後2004年に常務取締役に就き、2015年からは代表取締役を務めています。

-事業内容について説明してください。

瀬崎 シークルーズの前身企業である熊本小型船舶教習所は1978年の設立で、1995年からは不定期航路事業、いわゆる遊覧船事業を開始しイルカウォッチングクルーズに参入しました。さらに1997年にはマリーナを取得し「シークルーズマリーナ」としてボートの保管、修理、販売を含むマリーナ運営事業も手掛けるようになりました。2009年には天草の本渡と松島、それに宇城市・三角を結ぶ「天草宝島ライン」に就航し定期航路事業を開始しました。

 当初は経営に苦労しましたが、2011年の九州新幹線全線開通の際にJR九州の観光特急「A列車で行こう」との接続運航を開始し、事業拡大のきっかけを掴みました。

 2019年には人吉市の第3セクター「球磨川くだり」が経営難に陥り、市と金融機関の要望で株式の35%を当社で取得して、私が代表取締役として再建に当たりました。また2019年には空きビルを取得して滞在型宿泊施設「SEACRUISE HOUSE NAVIO」を開業。宿泊事業に進出しただけでなく、上天草観光交流拠点施設「mio camino AMAKUSA」の指定管理業者を引き受けて観光施設の運営も開始しました。

 2020年には7月豪雨で球磨川くだりが壊滅的なダメージを受けましたが、1年後の2021年7月には球磨川くだりの人吉発船場を、カフェや飲食施設、会議施設を併設する観光複合施設「HASSENBA」としてリニューアル。2021年には「シークルーズグランピング熊本天草」を全4棟で開業し、今年3月には全9棟へ増棟しました。

-各事業へのコロナ禍の影響度はどのようなものでしたか。
シークルーズグランピング熊本天草

瀬崎 観光関連事業者として大変大きなダメージを被りましたが、会社内でも事業分野によりその影響度は大きく異なり、脱コロナ禍の動きはK字型回復となっています。

 遊覧船事業と定期航路事業は需要の半分をインバウンドが占めていたため、コロナで需要が激減。20年の売上高は19年比で35%、2021年も45%までしか回復していません。他方、ボート免許教室やマリーナ事業はむしろコロナ禍が追い風となり、両事業とも20年の売上高が19年を上回りました。このため会社全体では20年の売上高は19年比で20%減に食い止められました。

 そうした状況だったので、余力があるうちに手を打ちたいと考え、昨年、新たにグランピング事業にも進出し、今年は新事業も加わったので、観光関連事業の売上高もコロナ禍前を上回るペースです。

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