和田長官「国内外の観光に明るい兆し」 全国旅行支援は感染状況を見極めて
観光庁の和田浩一長官は9月21日の会見で、水際対策の緩和や翌22日からツーリズムEXPOジャパン2022が開催されることに触れ、「少しずつ国内外の観光にとって明るい話題が出てきており、大変喜ばしいことと受け止めている」と語った。10月にも入国者数制限およびビザ取得義務の撤廃、個人旅行の解禁など、さらなる水際対策の緩和が検討されているとの報道については、「今後の水際対策に関する政府全体の方針は、9月12日の官房長官の発言通り、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを取りながら緩和を進めていくというのが基本的な考え方」とコメント。「ビザ取得義務の撤廃や個人旅行の解禁などは、インバウンドの本格的再開に向けての課題と認識している。旅行業界等からの要望をしっかりと受け止め、関係省庁に伝えつつ、政府の一員として今後の水際対策のあり方を引き続き検討していきたい」との考えを示した。
長期的な入国制限で滞るインバウンドの誘客に関しては「個人旅行解禁に備え、JNTOと連携し、国別、年代別などきめ細やかなプロモーションを速やかに、かつ集中的に実施できるよう準備を進めている」と説明。また、MICEの開催地が他国へ変更されるケースが発生していることについては「MICE誘致の観点から見ると現在の水際措置には課題があると認識している」と述べ、政府内で緩和を検討していく方針を繰り返した。なお、入国者健康確認システム(ERFS)のデータによると、観光目的での新規入国希望者数は、8月31日に岸田首相が水際対策の緩和措置を発表する以前は1日当たり平均683件だったが、発表後は約3倍の1日当たり平均2146件に増加しているという。
一方アウトバウンドについては、9月7日からの水際対策の緩和を受け「海外旅行に行きやすい環境が徐々に整ってきている」との認識を示した。秋冬の大手旅行会社の海外旅行や航空会社各社の国際線の予約が増加傾向にあること、北米、欧州、東南アジアの一部路線で増便が予定されていることにも言及し、「明るい兆しが見えてきており、さらなる需要回復に期待をしている」と述べた。
全国旅行支援については「具体的な実施時期については今後の感染状況を見極めたうえで判断することとしており、現段階で決定している事項はない」と説明。制度設計は6月17日の観光庁の発表から変わらず、割引率は40%、宿泊のみの場合の割引上限額は1泊あたり5000円。旅行需要全体の底上げに加えて、課題となっている広域旅行や平日旅行の促進を狙い、交通付き旅行商品の上限引き上げや平日におけるクーポンの上乗せを盛り込む。そのほかの詳細は現在検討を進めているという。
観光需要の回復を受けて、宿泊施設などでは人手不足も問題となっている。和田氏は「短期的には従業員のマルチタスク化やDX活用による生産性の向上のほか、パート等を含む従業員の新規募集や、人材派遣会社への派遣依頼等で対応していると承知している」と前置きしたうえで、中長期的な対応の必要性を強調。「まずは国内人材の担い手確保を進めながら、足りない部分は外国人材の活用を図っていくことが重要だ。前者については、レベニューマネジメントによる収益力の向上やDX化のさらなる推進によって労働生産性の向上や賃金水準の上昇を図り、魅力ある産業にしていく必要がある。後者については、業界とも連携し、特定技能試験の回数の増加などを図り、受け入れ強化に取り組んでいく」と説明した。