【労務のいろは】副業と兼業の実務-リスク排除のために
近年副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にあり、それに伴い会社側も副業・兼業を認める又は要件を緩和する傾向となっています。これに伴い複数の会社等に雇用される労働者にかかる法整備も進んでいます。
令和2年9月1日には労災保険給付(複数業務要因災害に関する給付)についての改正法が施行され、また令和4年7月8日には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改訂がされております。
またコロナウイルス感染拡大に伴い、在宅勤務が多くなることで、リモートワークをしながら副業・兼業なども見られるようになっており、これらを踏まえ、会社として労働者が副業・兼業を行える環境を整備するためのルールを考えていきたいと思います。
【1】就業規則の見直し
労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかについては、基本的には労働者の自由であるため、副業・兼業を認める方向で検討することが適当です。しかし、次の状況がある場合には、副業・兼業を禁止し、または制限することが可能です。
①労務提供上の支障があるとき
②業務上の秘密が漏洩するとき
③競業により自社の利益が害されるとき
④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為があるとき
ただし、禁止又は制限の妥当性については、それぞれの状況ごとに慎重に判断する必要はあります。こうした内容については、就業規則にきちんと規定しておかないとなりません。
モデル就業規則
過去の就業規則においては、副業・兼業については禁止にしている場合が多くみられております。しかしモデル就業規則にあるように国が副業・兼業を後押ししていることや勤務時間以外の時間について事業場の外で自由に利用できることとしている裁判例(マンナ運輸事件、京都地裁、平24.7.13判決)などを踏まえ、副業・兼業を現在禁止している就業規則は、早急に見直すべきであると思います。
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