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満室は<成功>ではなく、<失敗>である-宿屋大学 近藤寛和氏

  • 2022年8月16日

選ばれたい人から選ばれ、選んでほしくない人から選ばれない

 今年私は、自己投資として、ホテルや旅館を意識的に泊まるようにしています。1月から6月の半年間でちょうど60軒泊まりました。そこで気付いたのは、「コンセプトが明確・明快な宿は、それを選ぶ客層は同じような人が集う」ということ。

 選ばれたい人から選んでもらい、選んでほしくない人からは選ばれない。こんな最適なマーケティングが、コンセプトを際立たせることによって、成立する。世界観、好みの合う人たちと、空間と時間を共創していくホテルづくりができる。結果、ファンになったお客さんがまた、世界観、好みの合う人を連れて来てくれる。常連さん、贔屓客がどんどん増える。そういう顧客は、価格の魅力(=リーズナブル)ではなく、好みで選ぶので価格に頓着しない。

 そんな顧客と、数多く繋がっている宿は、単価を上げても客数は減らないでしょうし、無理して満室を目指す必要はなくなるのだと思うのです。

近藤寛和
1967年生まれ。ホテル業界の専門出版社であるオータパブリケイションズで記者を18年勤めた後に起業し、ホテル・旅館のマネジャーや経営者の育成を目的としたビジネススクール「宿屋大学」を運営。東京YMCA国際ホテル専門学校講師、立教大学観光学部兼任講師も務めている。