旅行の「不便益」とは?どんな旅行が記憶に深く残っていますか?-RT Collection 柴田真人氏
第19回目のコラムは、旅行の「不便益」をテーマに書いてみたいと思います。
近年、身の回りのいろんな商品やサービスが便利になり、時間短縮や効率化などプラスに働くことが多くなりました。特に何かを購入する際やどこかに行く際に便利さを感じることが多くなりました。スマホ1つで何でも購入できるようになりましたし、コロナ禍ではお弁当を宅配してくれるフードデリバリーのようなサービスも増えて便利になりました。
旅行に関してもスマホ1つで航空券やホテル、パッケージツアーなどを予約することができるようになりましたし、今では直行便の飛行機で離島に行くことができるようにもなりました。また、観光地における二次交通のサービスや周遊パスなども増えています。
不便だからこそ良いこと
先日、京都大学の川上浩司先生の「不便益のススメ」(岩波ジュニア新書)という本を拝読していると、「不便益」についての様々な事例を知ることができました。不便益という言葉は聞き慣れていない人もいると思いますが、読んで字のごとく「不便が益、不便だからこそ良いこと」という意味になります。
著書の中で事例として挙げられていたのが京都で実施された2つのツアーです。1つが「本能寺の変ウォーキングコース」というツアーで、明智光秀が「敵は本能寺にあり!」と叫んだ地点から当時の本能寺があった場所まで、峠を含んだ約30キロを踏破するツアーです。もう1つは京都の碁盤の目をした街を利用した「ルーレットガイドコース」のツアーで、交差点に差し掛かったらルーレットを回して、東西南北のどちらに行くのか、そして何ブロック進むのかを決めるツアーです。特に後者のツアーは有名な観光地に全く行けない可能性がありますよね。しかし、不便益の点で見てみると小さい路地でも京都ならではの歴史のあるものを発見したりすることができます。本を読み進めていくうちに様々事例を知ることができ、旅行における不便益について考えるようになっていきました。
そんな不便益を旅行に当てはめて考えてみたいと思います。今まで私が不便益を感じたのは、例えば、国内であれば休みの日に都内の日本橋から池袋まで歩いて帰ったときに「都内にこんなお寺や飲食店があるんだ!」という思いもかけない気付きの不便益や、東京から岐阜県の八百津町まで二次交通、三次交通を使ってパーコー定食をわざわざ食べに行ったときに、名物ガイドのタクシー運転手に出会った不便益があります。もし電車で日本橋から池袋まで帰っていたら、もし岐阜市からレンタカーで八百津町に行っていたら、そのような貴重な体験や出会いはなかったと思います。
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