HIS、19年度売上高は11%増で過去最高-今期は9000億円へ

  • 2019年12月12日

澤田氏  エイチ・アイ・エス(HIS)は12月12日、2019年10月期(18年11月1日~19年10月31日)の通期連結業績を発表した。売上高はカナダのRed Labelの連結子会社化や海外旅行の好調、電力小売りの伸長などにより、前年比11.0%増の8085億1000万円と過去最高に。営業利益はハウステンボス(HTB)の不調などで3.0%減の175億4000万円、経常利益は円高による為替差損などで12.4%減の170億8900万円となったものの、純利益はユニゾホールディングス株の売却(関連記事)などにより10.7%増の122億4900万円となった。

 旅行事業の売上高は10.9%増の7224億6400万円で、営業利益は12.7%増の137億5400万円。主力の日本発海外旅行は売上高が3.8%増の4521億1700万円となり、10連休以降の需要減をグアムや欧州などの好調でカバーした。チャネル別の送客数は店舗が41.1%、インターネットが44.9%、コーポレートが14.0%となり、初めてネットが店舗を逆転。なお、売上高については店舗が50.6%、インターネットが30.6%、コーポレートが18.8%で、依然として店舗がネットを大きく上回っている。

 旅行事業のその他のカテゴリーは、海外法人は42.1%増の約1803億円で、第3四半期からのRed Labelの連結に加えて、インバウンド事業が順調。国内旅行も1.7%増の614億円と売上高を伸ばした。一方、訪日旅行については主戦場の中国における競争環境の変化に伴い、収益性が悪化して4.0%減の286億円となり、約11億円の減益要因となった。

 HTBグループの売上高は8.5%減の280億8600万円で、営業利益は30.6%減の50億7500万円。新規イベントや訪日客の減少などにより、HTBの入場者数が6%減と低迷したことが響いた。ホテル事業は「変なホテル」の軒数増などで、売上高が5.3%増の126億7600万円となった一方、開業費用やウォーターマークホテルの売却などにより2億1700万円の営業損失を計上。九州産交グループは売上高が2.7%増の222億3000万円で、営業利益は60.3%減の1億5800万円だった。

 新たなセグメントのエネルギー事業は、売上高が70.7%増の204億6100万円、営業利益は9億7400万円(前年度は4億2800万円の損失)。売上高は契約数の順調な増加により大幅に増加し、営業利益は調達先の多様化により黒字に転じた。

羽田対応やオンライン販売など強化-航空券テック企業のM&Aも

 今期は消費増税の影響や、東京五輪開催時の需要減の可能性などの不安要因はあるものの、レジャー需要は底堅く推移すると想定し、売上高は16.0%増の9000億円を見込む。営業利益は10.0%増の193億円、経常利益は14.1%増の195億円とし、純利益についてはユニゾ株売却益の計上の反動により、10.6%減の110億円と予想した。今後は羽田の発着枠拡大にあわせて仕入れや長距離方面の販促の強化、既に開始しているウェブサイトのリニューアルによるオンライン販売の強化、訪日欧米人旅行者の取込強化などに努める。

 そのほか海外での旅行事業については、東南アジアでトラベルテック企業のM&Aを計画。「LCCとの接続やボーダーレス発券、NDCに対応した最新技術を活かし、BtoBで航空券の発券を効率化している会社」を獲得する考えで、旅行消費に占める航空券販売の割合が大きく、かつIATA代理店が少ないアジアの未開拓市場で、アウトバウンド事業を大きく拡大するという。

 HIS代表取締役会長兼社長でグループCEOの澤田秀雄氏は決算発表会見において、今後のHISグループの方向性に関し「もちろんメインは旅行業」と改めて強調。その上で、本腰を入れ始めた商社事業などにより、さらなる事業ポートフォリオの強化をはかる考えを示した。HISは来年の8月1日を目途に、事業の多角化に対応するため、持株会社体制へと移行する予定。澤田氏はそのほか、記者からの質問に答える形で旅館の再生などにも関心を示した。