地域が稼げる訪日旅行の構築を-JATA経営フォーラム

海外旅行のノウハウをインバウンドにも活用
旅行会社が関われるビジネス循環を

インバウンドで生きる旅行会社の強みとは

モデレーターの佐藤氏  パネリスト各氏のプレゼンテーションを踏まえ、モデレーターの佐藤氏は、旅行会社がインバウンドビジネスに介入できるポイントについて問題提起。気仙沼の菅原氏は「最初は売り方や送客の仕方が分からなかったため、ツアー造成で旅行会社にお世話になったほか、インバウンド戦略の検討にも参加してもらった」と地元での経験を紹介した。また、観光庁の瓦林氏は、旅行会社の役割は「地域の素材に付加価値を付けるところ」とし、「儲けることのできる素材を組み合わせ、商品造成するところに旅行会社の強みが生きるのではないか」と提言した。

 JATAの丸尾氏は、「それは『リアルエージェントに何ができるのか』と同じ問い」だと発言。既存のコンテンツでも外国人目線で磨き上げ、組み合わせることで訪日外国人旅行者にも売れるものになるとの持論を展開した。さらに、「ツアーグランプリ2017」の国内・訪日部門で観光庁長官賞を受賞した阪急交通社の「自然豊かな街釧路で過ごす10日間」を引き合いに、「なぜ10日間もの長期滞在商品が売れたのか、よく考えてみるべき」と提言した。

 最後は、地域内あるいは地域間での協力体制について議論をおこない、瓦林氏は「ルート作り、DMOの立ち上げなどの支援をしていく。ただ、それらを軌道に乗せるのは地域の仕事」と観光庁の立場を説明。丸尾氏は、「地方の観光協会の発想は宿泊事業者が中心になりがち。ニーズが多様化しているなか、地域内でしっかり話し合うことが大切」と提言し、事業者が儲ける仕組みを構築していくことが急務と付け加えた。菅原氏は、気仙沼で活動している観光振興チームを「地域でおもしろいことをやってみたい人たちの集まり」と表現した上で、地元と一緒になって観光を作り上げていく重要性を強調した。

 パネリストの議論を受けて、佐藤氏は「訪日外国人4000万人の達成は現実味を帯びてきた」と発言。今後は「もっと違う日本を知りたい」という需要が高まると予想されることから、「日本の隅々に外国人が行けるような環境づくりが求められる」と述べた。また、旅行会社の役割として、「これまでアウトバウンドで積み上げてきたノウハウは大きい。これをインバウンドで活かすことができるはずだ」とまとめた。