現地レポート:メキシコ中央高原のコロニアル都市を歩く

  • 2017年7月5日

世界遺産の街並みを楽しみながら
女子旅の可能性も探る

「最も美しい街」グアナファトと
外国人が集うサン・ミゲルを散策

入り組んだ小道を行くと、急に地下道の入口が現れる  グアナファトはスペイン植民地時代の16世紀から18世紀にかけて銀の産地として繁栄した街で、旧市街はコロニアル調のカラフルな建物で埋め尽くされ、「メキシコで最も美しい街」と呼ばれることも多い。街は盆地のなかにあり、街並みが周囲の山肌にまで広がっている眺めは、観光名所の「ピピラの丘」などからも楽しむことができる。なお、美しい市街の下には洪水対策のために造られた無数の地下道が張り巡らされており、入り組んだ小道の多い街を、地下道の入口と山の頂を一緒に見ながら歩いていると、随分立体的な街という印象を受ける。

 この街は19世紀初頭にはじまったメキシコ独立戦争における重要な舞台でもある。中心部には解放軍が初めてスペイン政府軍に勝利した「アロンディガの穀物倉庫」などが、「ピピラの丘」には独立戦争の英雄である先住民のピピラを称える巨大な像がある。

セレクトショップで販売されていた、先住民のオトミ族の刺繍をモチーフにしたクッション。オトミ族のデザインはエルメスのスカーフに採用されたこともある そう紹介すると、どことなく歴史好きなシニア向けのデスティネーションのように思われるかもしれないが、街中には近年のメキシコの経済成長を受けてか、洒落たホテルやレストラン、ショップの類も多い。それらの存在感は街並みの華やかさと相まって、この街が女子旅のデスティネーションとして成立する可能性を示していたし、実際に今回のツアーに参加した記者も、3分の2が女性なのだった。

 メキシコについては「治安が悪い」というイメージを持つ人も多く、地域によってはその見方も正しい。しかしグアナファトとその後に訪れたサン・ミゲル・デ・アジェンデについては、ともに治安の良さが印象的で、市街地には政府が防犯のために設置した監視カメラも多い。夜のかなり遅い時間にもかかわらず、薄暗い路地を女性が独りで歩く姿を目にしたりする。

通りの両側にカラフルな建物がずらりと並ぶ  グアナファトから車で東に1時間半ほど進んだサン・ミゲル・デ・アジェンデも、歴史を感じさせるコロニアルな雰囲気とともに、カラフルな建物が目を引く。中心部は坂が多いものの傾斜はそれほど急ではなく、見通しの良い通りが多い開放感のある街並みには、グアナファトとは違う魅力がある。どの通りも眺めは絵になり、似たような写真が増えることは分かっていても、ついついシャッターを切り続けてしまう。

老舗の高級チョコレート店「Johfrej」。米国人らしき客がプレゼント用にまとめ買いする姿も  サン・ミゲル・デ・アジェンデにも、グアナファトと同様に洒落たレストランやカフェなどが多く存在するが、そこにはラテン系とは明らかに違う、アングロサクソン系の白人を見ることが多い。この街は米国の富裕層向け旅行専門誌「コンデナスト・トラベラー」が13年に発表した「世界の都市25選」の首位に選ばれて以来、欧米人旅行者の注目を集めており、米国などからのセミリタイヤの移住者も増えている。その分、地元の人々は物価の上昇に悩まされていると聞くが、いずれにせよ外国人が安心して快適に暮らせている様子は、旅行者にとっては安心感につながるのだった。