「危機管理広報」でピンチをチャンスに-JATA経営フォーラムから

  • 2017年4月12日

講演に加えて模擬訓練を実施
田川会長「ネット時代に即した広報を」

情報は会見よりも先に拡散
「マニュアルが通用しない時代」に

模擬訓練の様子  2氏の講演の後には、参加者がそれぞれ3人から4人程度のグループに分かれて、事故が発生した際の初動対応をテーマに模擬訓練を実施。静岡県の国道でジャタ旅行が催行するツアーの貸切バスに大型トレーラーが衝突し、多数の死傷者が出たとの設定で、警察からの第1報を受けた後に必要な初動、情報が限られている初期段階でのコメント、記者会見の開催日時や場所、会見者の決定などの課題について参加者が意見を出しあった。

 その後は各グループが意見交換の結果を発表し、講師が用意した模範解答とともに適切な対応を確認。警察からの第1報の後には直ちに社長や役員などに連絡し、社長を本部長とする事故対応本部の設置を検討すること、初期段階でのコメントについては窓口を広報担当者に一本化するとともに、全社を挙げて対応している旨を「話せる言葉」で用意しておくこととした。

 「言うべきこと」「言えること」「言えないこと」については、募集時に開示している日程などの情報に加えて、ツアー客の人数や会社の対応などは「言うべきこと」に分類。警察が公表していない情報やツアー客の個人情報などは「言えないこと」、貸切バス会社が日本バス協会の安全性評価の認証を取得していないことなどは「聞かれたら言えること」とした。記者会見については、警察の会見により被害状況が明らかになった後に、基本的には自社内、または記者クラブなどで開催することを確認した。

田川氏(写真は開会式での挨拶時)  講演や模擬訓練の様子を傍聴したJATA会長の田川氏は本誌に対して、旅行業界における広報対応の取り組みは依然として不十分との見方を示し、「宣伝は上手でも、広報が下手な会社が多いのでは」と指摘。各社が取り組みを強化しなければ「事件や事故などが起こると、すぐに混乱をきたすことになる」と懸念を示した。

 また、インターネットが発達した今日の広報対応のあり方については、「記者会見を開催するよりも先にネット上に情報が拡散する、マニュアルが通用しない時代になってきている」と説明。各社の広報担当者に対しては「今後は広報対応の基本となる幹の部分はマニュアルで対応できても、枝葉の部分は対応できない。今日のような場では幹の部分をしっかり勉強して理解し、変化し続ける枝葉の部分に対応してほしい」とエールを送った。