新春トップインタビュー:HIS代表取締役会長兼社長 澤田秀雄氏

「世界のHIS」へ
2020年めどに売上1兆円めざす

-テロや天災のリスクはいかがでしょうか

澤田 テロについては、影響が出るのは仕方がない。例えばトルコでテロが起こればトルコに行く人は減る。だから我々としてはトルコの企画を減らすしかない。それは残念だが仕方がない。

 そのリスクヘッジはできそうでできない。どこでいつ地震が、テロが起こるかわからない。起こった瞬間にその場所の企画は行く人が減るので、減らすとか、やめるとか、他に力を入れるとか、他の人気のある場所にシフトするとかしかないといけないのではないか。オフシーズンを売ろうなどとは訳が違う。もちろん状況が変わって「行ける」となったら仕掛けるが。

 一方で、海外の支店網はお客様へのサービスや、問題が起きた際のケアや情報収集の拠点になり、安心感に繋がる。OTAではそうはいかないので、支店をなくす気持ちはない。OTAができないことをやらなくてはならない。とはいえ、やはりOTAの方が伸びるとは思うが。


-昨年はコンプライアンス違反のリスクも顕在化しました

澤田 いつも言っているのは、正々堂々やりなさいということ。やはりみんながハッピー、が一番いい。仕入れ先が、HISが、お客様がハッピーでなければ続かない。たまにスタッフが間違えることもあるが、やはりうちだけハッピーでほかがハッピーでなければいつかおかしくなるし、逆も真なりというポリシーだ。


-外国人の採用も増え、働き方も変化を迫られているのではありませんか

澤田 あまり感じない。タイではほとんどタイ人が働いていてインドネシアもそうだが、その国にあったやり方でやるべき。

 日本では、残業は少なく、有休は取りやすいという方向に向かっていっている。やはり環境はどんどん変化していかなければならない。その分どこかで効率を、生産性を上げていかないと弱っていくが。

 効率化のポイントはロボット化やシステムの見直しなどだ。例えば「変なホテル」は1年半前にできた時は30人いたのが、新しいロボットを入れたりシステムを変えたりした結果、今は客室数が倍になって8人で、第1四半期のうちに6人に減る。旅行業も一緒だと思う。一気には進まないが。

 また、従業員満足の向上にも取り組む。やはり環境が良い職場の方がいいわけで、徐々に進めていく。


-効率化の結果、社員数を減らしていくということでしょうか

澤田 社員数は現在、HIS単体が約9000人、グループ全体で約1万4000人だ。これからは新しい分野にも進出し、世界展開も始まるのでどんどんスタッフ数は増える。

 今後は外国人の比率が高くなっていくだろう。現在は7割から8割が日本人だが、徐々にその割合は減っていく。


-店舗展開はどのようにお考えでしょうか

澤田 海外は増える。国内店舗も、約300店の既存店舗をすぐに撤退するつもりはない。ただしどうしても採算に乗らないとか、駅前に複数ある場合は統合したりする。効率化のために減ることはあるが多くは減らない。

 国内も新規出店はしているが、専門店など新しい形態の店舗だ。常に新しいことにチャレンジしなければならない。


-10年後、ホテルや植物工場が事業の柱になっている時のお役職は

澤田 何ともいえない。10年後にはまだ75歳だが、元気かどうかもわからない。今はみな70歳ぐらいまで元気にやっているが、創造力、体力、精神力がなくなれば降りた方がいい。

 後継者候補は、澤田経営道場で育てている最中だ。その人間に経営をさせてみて結果を出した若手がHISの将来を担うことも選択肢の1つ。実際に、来年の4月からグループ会社の経営に携わる予定だ。ただし、結果が出るのは3年から5年後だろう。

 しっかりと成績を出す人、5年後から10年後のビジョンを語れる人、創造力がある人、マネジメント力や人望がある人、人間性が良い人など、ある程度の要素を備えた人がHISを担った方がいい。10年後に交代するとすれば、後継者の年齢は30代から高くても50代までだ。


-ありがとうございました