外国人目線の広域観光促進を-ツーリズムEXPO訪日シンポ
地方にこそ日本の自然や文化の魅力が
価値を理解し、体制整備や情報発信を
外国人の意見や感想を重視国外への的確な情報発信を
国土交通省出身で、現在は九州旅客鉄道(JR九州)常務取締役を務める後藤靖子氏は、九州における訪日外国人旅行者の取込施策などについて解説。近年注目を浴びており人気が高まっている、九州各地を走る観光列車について紹介した。JR九州は2010年頃から、物語性とデザイン性にこだわった特急「A列車で行こう」などの「デザイン&ストーリー列車(D&S列車)」の運行を開始。11年に九州新幹線が全線開通してからは、新幹線の沿線を軸に、郊外のローカルなエリアにD&S列車を運行する戦略を採った。
後藤氏は、これらのD&S列車は「インバウンドにおいても九州のキラーコンテンツの1つになっている」と述べ、博多と由布院や別府を結ぶ列車「ゆふいんの森」については、平日では外国人の利用者が7割近くに上ることを説明した。豪華寝台列車「ななつ星」も外国人旅行者に人気を博しており、利用者全体の10%を占めるという。
多言語でのウェブマーケティング事業などをおこなうエクスポート・ジャパンの代表取締役社長を務める高岡謙ニ氏は、同社が運営している訪日外国人旅行者向けの日本情報紹介サイトである「ジャパンガイド」について紹介。同氏は運営スタッフに外国人を多く採用し、外国人の目線に立った情報提供に努めていることを説明した上で、日本から発信する情報と、外国人旅行者が日本で抱く感想との齟齬を少なくすることの重要性について説明した。
また、高岡氏は「日本国内における外国語の情報が少なすぎることが、外国人旅行者の不満のトップ」と述べ、多言語による案内表示などが進んでいない問題点を指摘。ただし看板を増やすだけでは美観を損なうため、旅行者がQRコードをスマートフォンなどで読み取ることで、希望の言語で情報を得られる同社のサービス「QR Translator」などを活用して、比較的少ないコストで多言語化を進めることを提案した。
JTBグローバルマーケティング&トラベル取締役地域営業部長の吉村久夫氏は、ゴールデンルートには魅力的な観光地が多く、交通インフラが整い、情報の発信量が多いことから「今の状況では国を挙げて地域誘客をおこなわないと、観光客が集中してしまう」と指摘。その一方で「これらを備えることができれば、第2、第3のゴールデンルートが各地で生まれる可能性は十分にある」と語った。