今後50年の旅行の姿、生き残りのキーワード-JATA経営フォーラム

  • 2014年3月25日

すでに様変わりしている旅行業界
この10年の対応から今後の方策を探る

ワールドトラベルシステムの神田貴宏氏

 パネルディスカッションでは、すでに旅行業界で起きている変化とその対応から、将来の生き残り策についての提言もあった。

 航空券販売では、ワールドトラベルシステム専務取締役の神田貴宏氏が、「航空券はもはや旅行会社の商品になるのかというところまできた」と厳しい状況を説明。その上で「特に中小旅行会社には、面白い局面が訪れているとあえて言いたい」と声を強めた。

 例えばアライアンスやATI認可の共同事業の誕生で、往復で異なる航空会社の予約が可能となった。「航空会社のサイトでは自社便販売を優先するため、検索してもでてこない」というのもポイントだ。また、航空券の予約・販売が出発1年前から開始となり、ピーク期の旅行を早期に確保できるようになり、先ごろの手配では2014年12月28日発の年末年始のホノルル行き航空券を17万円で購入できた。発券制限はあるが、キャンセルチャージは3000円で済む。手配料を1人5万円としても、同時期のパッケージツアーに参加するより総額で安くなると喜ばれたという。

ミキ・ツーリストの檀原徹典氏

 神田氏は「今話したことは、規模や会社の貢献度は関係ない。知っていたか知らないかだけだ」と述べ、「“知識は力なり”が今後のキラーコンテンツ。“人間力”こそ重要な戦略であり、これはこの先も変わらない」と提言した。

 また、オペレーターの立場からミキ・ツーリスト代表取締役社長の檀原徹典氏が、世界的な旅行需要の高まりでサプライヤーが強くなり、ホテルが売り手を選ぶ時代になったと指摘。また観光バスもLCCなどとの競争で減少し、現地ガイドも高齢化で手配しにくい状況であるとし、商材を見直す時期にあると危機感を示した。

エヌオーイーの林田建夫氏

 その上で壇原氏は今後、旅行会社は「サプライヤーにも価値を提供することが必要」と提言。双方で地域の観光産業を盛り上げていく意識を持ち、旅行会社の存在価値を示す必要性を訴えた。一方、オペレーターとしては現地からの発信力を高め、旅行会社が今後必要となる“ソフト力”の部分に貢献できるよう、自社の価値を高めていく考えを示した。

 モデレーターを務めたエヌオーイー代表取締役会長の林田建夫氏は「旅行業の変化のスピードはこれが現実」と述べ、「変化に対応する柔軟性とホスピタリティ、提案力、企画力知識が必要。未来に向けて今をしっかり歩んでいきたい」と議論を締めくくった。


取材:山田紀子