トップインタビュー:オーストラリア政観日本・韓国地区局長のライリー氏
-日本市場の可能性はどこにあるとお考えでしょうか
ライリー 2点ある。1つは、日本市場でオーストラリアの認知度が向上したというが、20年前の写真を見て知っている、というような印象だ。旅行会社の方々でもその傾向がある。より理解を深めていただけるようにしていきたい。
2つ目は、日豪関係が、昔からあるような関係、古くて居心地が良いような関係になっているように思う。日本から見たオーストラリアは非常に良いイメージだが、日本はファッションやトレンドが大切な国だと思う。
例えばスカイツリー、ヒカリエなど、日本では毎年あちこちに新しいスポットができる。そして消費者は新しいものに対して素早く反応する。日本はトレンドに敏感な、「エキサイトメントの国」ではないか。
例えばシンガポールの需要増も、マリーナ・ベイ・サンズを舞台にしたテレビCMでブームに火がついた。シンガポールはもう知っている、もう行った、と思っていたところが突如変化した。オーストラリアも、良いイメージを持っていただいているところに新しい情報を付加していくことが課題だと思っている。
-今後の活動の基本方針をお聞かせください
ライリー 単純にいえば、シェアを5%に戻すためにはさらに30万人が必要となる。現実的な考え方としては、2016年までの3年間で50万人に達することは十分に可能だと思っている。航空座席の問題はあるが、3年間あれば具体的な対策を取っていける。
また、この10年程度、TAの日本における活動で弱点があったとすれば、グローバルキャンペーンをベースに展開してきたことだろう。日本市場は日本市場独自のキャンペーンが求められる。
グローバルキャンペーンはとても効率の良い手段で、欧米やニュージーランド、アジアの一部では効果を発揮する。しかし、日本などの国々は、言語や文化などの事情で、グローバルキャンペーンが最良の手段ではない場合がある。市場特性に合わせた活動をしなければならない。
今後、TAではグローバルキャンペーンのテーマとして食とワインの魅力訴求に力を入れていく計画がある。旅行者にオーストラリアの食とワインについてのイメージ調査をしたが、旅行の前後で印象が大きく変わることがわかった。このギャップをテーマに日本に合った形でプロモーションをおこなう。
食の面で非常に優れている日本で「食とワインがいいのでオーストラリアへお越しください」というつもりはない。オーストラリア旅行を「立体的」にするための材料だ。オーストラリアの旅行がこれまで2次元的だったとすると、食とワインの魅力により3次元的イメージに進化させたい。
オーストラリアが特に日本人に提供できるのは食の“体験”だ。例えばメルボルンのカフェ文化、あるいは屋外で景色を楽しみながらのダイニングなど、全体的な体験として提案したい。
-航空座席の増加に向けてどのようなお取り組みをされるお考えでしょうか
ライリー オーストラリアへの航空路線の状況はこれまで、まさに嵐のようだった。JLの経営再建、QFの経営的な困難もあり、あるいはかなり前になるが全日空(NH)、アンセット・オーストラリアの路線も失っている。
直行便、経由便を運航している航空会社と話していると、今はいずれもオーストラリアの市場の問題というよりも、機材の不足が課題として出る。機材不足が解消されれば、オーストラリア路線も速やかに供給量が拡大するものと確信している。
特に経由便を運航する航空会社は、非常に前向きな姿勢を示してくれている。直行便拡充についても、2014年の前半は難しいが後半には多少可能性があり、2015年になればさらに期待できると考えている。臨時便やチャーターでの需要への対応は順次増えていくと考える。
オーストラリア政府も、アビエーション・デベロップメント・ファンドという新路線開拓のための特別予算を組み、州政府や航空会社とともに開発に取り組んでおり、これも助けになるはずだ。