旅館とWIN-WIN、ニーズのマッチングが鍵、WEBにない情報提供を
旅をストーリーとして売るよう意識変革を
では、OTAと差別化し、旅行会社のプレゼンスを高めるにはどうすればよいのか。高橋氏は、課題を解決するためにはビジネスモデルの変化を認めることが肝心であると訴える。
これまで旅行会社は「旅館を売る=券(クーポン)を売る」ことであり、店頭で販売したら仕事は終了という風潮が一般的だった。しかし現在、旅行会社の店頭へ足を運ぶ人は、単に旅館を手配するだけではなく、WEBサイトでも分からないプラスアルファの情報提供や、出発から帰宅するまでの旅行全体のプロデュースなどを期待している。このため、高橋氏は「旅館を売るという考えから脱却し、様々な付加価値をつけて、ストーリーとして販売するという意識が求められる」と話した。現実的には、人件費や従業員教育などからみて難しいケースもあるとしながら、「魂としては、ここにこだわらないと旅行業のビジネスは成り立たない」(高橋氏)と強く訴えた。
情報を旅館へフィードバック、地域連携で観光地の掘り起こしを
高橋氏は今後、旅行会社と日本旅館は「多彩なお客様を知る立場」と「ニーズに合わせて旅というストーリーを提供する重要なコンテンツという立場」としてwin-winの関係を作り出すことが必要になると説く。そのためには、高橋氏は旅行会社に対し、多彩な顧客ニーズを知っていることに自信を持ち、それを活かした旅館へのマーケティング機能を発揮することが重要と力説。宿のアンケート結果も、ランキングや苦情処理に利用するだけでなく、旅館へフィードバックをおこないサービスの改善に役立てていくようにすることが、口コミなどに対抗する手段として有効だと語った。
さらに、高橋氏は旅行会社に対し、流行の地域や売れる地域の商品を造成し販売するだけではなく、「地域や着地観光に理解を示し、新しい魅力的な観光地、観光資源の掘り起しに取り組む人材を育てること」が重要だと説いた。検索が中心のWEB販売に任せれば、一部の知名度がある地域を除き多くの地域が検索結果から漏れ、疲弊してしまう。2020年に東京オリンピック開催が決まり、訪日外国人旅行者の増加が期待されているが「現在の知名度がある地域だけでは対応は不可能。キャパシティを広げるためにも、新しい観光地の掘り起こしは急務だ」との考えを示した。
また、旅館に対しても、旅行者を囲い込むのではなく、例えば朝の収穫体験などサプライズな魅力を地域と連携して作るといった「地域のプロデューサー的な役割を担うことが重要」であるとし、旅館に協力を求めていきたいとした。
このほか、高橋氏は日本旅館の品質を細分化し、客観的基準でサービスコンテンツの品質を示すことを提案。ソフト、ハードそれぞれについて「ある・なし」の基準で評価し、格付けではなく各項目のカバー率で記号などを用いて認定する仕組みを示唆した。日本旅館の品質については難しい面も多々あるとしながらも、「個人的には、サードパーティーである公的機関、あるいは業界団体と国とジョイントでつくる認証機関で、公平な基準で認定をすることが望ましい」との考えだ。