約款に「柔軟性」を、取消料や旅程保証など議論-JATAシンポ

  • 2011年10月27日

▽旅程保証、消費者保護が商品多様化への足かせに

 ザ・ジェイ・チーム代表取締役 ゲライント・ホルト氏 旅程保証に関する議論では、原氏が、契約書面のホテルリストに2ツ星から5ツ星までのホテルが記載されている場合、「契約したホテルに泊まれなくてグレードの高いホテルに変更しても返金しないといけないのは不可思議だ」と発言。また、柳田氏も「現行の旅程保証を考えると、旅行会社はリスクを回避するために、どうしても大胆な提案や、大規模なイベントを組み込んだ商品を造成しづらい」と話す。

 原氏は事例として、イギリスの旅行会社トムソンホリデーズが設定している旅程保証のルールを紹介。トムソンホリデーズの約款では、84日前までの変更手数料を無料としている一方、トムソンホリデーズ側が商品内容を変更する可能性について記載しているという。

 その上で原氏は、「日本のパッケージツアーは半年前から旅程保証がかかってくる。多様な商品を作らないといけない時代に画一的に規制するのはどうなのか」と言及。ホルト氏も、「旅行者を保護することも大切だが、規制により、高品質な商品が造成できないことは、結果的に旅行者のためにならない」と指摘した。


▽取消料規定、グローバル市場の実態にそぐわず

 かもめ取締役ホールセール部部長 柳田正弘氏 取消料についての議論で原氏は、「日本ではブッキングコンディションにあわせて取消料を変更できない」ことを指摘。柳田氏も、海外ホテルにおける取消料やデポジットの発生時期が早くなっていることを挙げ、「確実にホテルを押さえるには、お客様に取消料を負担していただく必要があるが、現行の約款では取消料をいただけない」とし、「ホテルを押さえた後でキャンセルになった場合、旅行会社だけでは取消料は賄いきれない」と窮状を訴える。

 こうした仕入れへの影響について原氏は、「日本だから良いホテルが仕入れられる、というようなジャパン・プレミアムの時代はもう終わった」と断言。BRICsやアセンアン諸国の市場が急成長する中で、支払い遅延やデポジットの未払いなどが発生する日本市場は優遇されないと強調する。

 柳田氏も、現在の支払いサイクルについて「(ホテルによっては)デポジットとして半年前からフルチャージ、あるいは3ヶ月前からワンナイト分が必要なホテルもある」という。特に多客期は厳しく求められるといい、「(多客期以外は緩やかであることで)オペレーターはなんとかやっていける状態」と現状を説明した。

 ホルト氏も、「世界の支払いサイクルはより短く、より早くなっている」と分析。「良い商品をつくるには良いホテルを確実に仕入れないといけないが、そのような宿泊施設は数に限りがある」とし、旅行市場のグローバル化により競争が激化する中で、「支払いが早いところが優先的に宿泊施設を確保できるという傾向は、今後ますます強まるだろう」と指摘。日本の支払いサイクルではグローバルの市場で対応できないとの見解を示した。