日系2社に聞く、国際提携戦略の現在とアライアンス論(ANA編)

是々非々で国際ネットワーク拡大
今後は「JV間競争」激しく

今年2月に開催したPALホールディングスとの提携調印式  ANAグループは、2018年度から22年度までの中期経営戦略において、全日空(NH)による国際線の拡大を成長の柱として位置づけ、自社便および提携する他社便によるホワイトスポット(未就航地域)への進出を中心に、路線網を拡充している。16年にはNHが加盟する世界最大アライアンスのスターアライアンスとは異なる、スカイチームのベトナム航空(VN)と資本業務提携を結び、昨年3月には同じくスカイチームのアリタリア-イタリア航空(AZ)と包括提携。今年1月にはフィリピン航空(PR)の親会社であるPALホールディングスとも資本業務提携に至っている。

 そのほかにもスカイチームのガルーダ・インドネシア航空(GA)とは13年に包括提携に合意し、コードシェアなどを実施。スターアライアンスやジョイントベンチャー(JV)の枠組みに軸足を置きつつも、アジアを中心にアライアンス外の航空会社とのパートナーシップを積極的に展開し、同じくアライアンスの枠を超えて提携に勤しむ日本航空(JL)としのぎを削っている。NHの現在の国際提携戦略に対する考え方や今後の方針について、詳しい話を国際提携部担当部長の中尾敦氏に聞いた(JAL編へのリンク)

-まずは、NHの国際提携に関する基本的なお考えからお聞かせください

中尾氏中尾敦氏(以下敬称略) 国際提携はネットワーク拡大のために重要な分野と位置づけている。自社便を増やすことと提携会社を増やすことは、ネットワーク拡大においては車の両輪で、自社だけでは実現不可能な路線では、パートナー会社の存在が大きい。これからネットワークを拡大するためには経済合理性を追求していく上でも、パートナーとの提携でネットワークを広げていことは大切になってくる。

-NHが加盟するスターアライアンスは1997年に設立され、NHは99年に加盟しました。その背景について、改めて教えてください

中尾 それまでの日本発国際線はJLの独壇場だった。成田空港のスロットも少なかったNHの国際線は弱く、自力でできることは限られていた。アジア最大の航空会社だったJLは“自前主義”を押し通したが、NHは自力では難しい部分について、国際的なアライアンスの力を借りたということだ。スターアライアンスにとっても、当時は世界第2の経済大国だった日本の航空会社の加盟は大きかったし、アジアと北米を結ぶゲートウェイとしての日本を重視していただろう。