ロンドナーが愛するジンとビール、「ビーフィーター」と「フラーズ」の工場見学へ
この夏はイギリスの観測史上初の40度を記録するほどの猛暑もあったロンドン。今も例年より暖かく、のどが乾いたらロンドン名物のパブでグイっと1杯。パブではビールはもちろん、ジンをベースにしたカクテルはイギリス人の大好物。最近はいわゆるクラフトビールやクラフトジンブームで醸造所や蒸留所ツアーは地元でも大人気。ただ、全般的にはパンデミック後は人手不足のせいか、まだ以前より少ない催行日、かつ人数も15-16名を限度にしている所がほとんどです。
現在ロンドンには20か所以上のジン蒸留所、ビール醸造所は大小含め120か所ほどあるようですが、今回は知名度があり、かつ個人でも行きやすい所をそれぞれ紹介します。
まずジンから。原料は穀物で作る純粋なアルコールとジュニパーベリー(西洋ねずの実)がベース。ヨーロッパでは11世紀頃から修道院で薬用酒として造られたのが始まり。その後イギリスでジンが本格的に普及したのは17世紀末、オランダ総督でもあったウィリアム3世とメアリー2世の共同統治時代。しかし製造を無許可にしたせいでピーク時は酒場以外の床屋やコーヒハウスでも飲まれ、粗悪品で命を落としたり犯罪も増加、女性や子供までジン中毒となるほどの大きな社会問題に。一旦は下火になるものの、18世紀末から再び上流階級の間で流行し、いまや国民的飲み物に。ジン自体はカロリーゼロなのでソーダ水などで割れば糖分なしというのも人気の一因。
ビーフィーター Beefeater London
ロンドン塔を守る衛兵、ビーフィーターのラベルが目印。1820年チェルシー蒸留所として開業、1876年にビーフィータージンが誕生。以来世界で最も愛されるジンの1つとなり、数々の賞を受賞。1995年にカリスマ・ディスティラーのデズモンド・ペインを迎えクラフトジンの分野でも注目の老舗。日本茶をベースにしたジンもある。
地下鉄Vauxhalls駅から徒歩10分 ツアー所要時間1時間半/25ポンド
金曜~日曜 13時/15時/17時 ※土日は11時もあり
日本の冷えてキリっとしたラガーも美味しいですが、イギリスのビールといえばやはりエール。ラガーより甘味とコクがあり、ぬるめの温度で炭酸もアルコールも弱め。最初は苦手でしたが、滞在が長くなるにつれ地ビールの美味しさに気づき、今では私もエールファンに。
ビールの歴史はジンより更に古く、2000年以上前、ローマ以前のケルト時代からすでにビールが飲まれていたという説もあります。ロンドンのパブも、一時はラガーやピルスナーが流行しましたが、最近はまたエール人気が再燃。特に2000年以降は税制や法律が変わり、どんどん新しいクラフトビールメーカーが増えUK全土で現在は2200社以上。でもやはりロンドンの地ビールといえば200年近い歴史を誇るロンドンプライドが一押しです。
フラーズ Fuller’s
西ロンドン、チズィックのテムズ川沿いに350年以上前からある醸造所。昔は材料の麦が船で運ばれ、湧き水で作られたビールはまた船で各地に運ばれるという重要な立地。有名な「ジン横丁とビール街」を描いたホガースの家と庭園はここから徒歩7分ほどの距離。幾度も経営が変わり19世紀半ば傾きかけたグリフィン醸造所を救った3人、フラー、スミス&ターナーが1845年に創業。以来、ビール造りだけでなくロンドンとイングランド南部を中心に380軒以上のパブとホテルを経営。2019年から醸造部門のみ日本のアサヒビールに売却。しかしビール造りは一切変更せず、これまで通りの製法を守っています。
地下鉄Turnham Greenから徒歩15分 ツアー所要1時間半/25ポンド
火曜~土曜 11時~15時 毎時出発 ※金曜は16時最終 ※日曜は13時~15時の3回
以上いずれもツアーは英語のみですが、世界にたった1つの製造拠点、お酒に興味のある方、視察グループにもにおすすめです。(ロンドン在住 スウィグラー久美子)
※写真をクリックすると詳細キャプションが表示されます。