【弁護士に聞く】ダイナミックパッケージの問題点?

  • 2022年6月22日

 次は、より本質的な質問で、ダイナミックパッケージの手配内容からすると、もはや募集型企画旅行とは言えないものがあるとし、例えば、フリーツアーのパッケージは新たに手配型企画旅行として販売店が手配料金・変更料・払い戻し手数料をもらえる仕組みにできないかという。

 何とかリテーラーとしての増収を図りたいという気持ちはわからないではないが、ダイナミックパッケージというシステムの利用を前提にする限りは理屈に合わない提案である。ダイナミックパッケージは、「旅行業者が手配すべき個々の運送・宿泊機関等を予め選定し、その中から旅行者がサービスを選択して旅行計画を組み立てる旅行取引」(旅行業法施行要領第一3、2)(4))であるから、旅行会社がすべきことはシステムを作って、その中に運送・宿泊機関等の情報をインプットした段階で終わっているので、「販売店が手配料金・変更料・払い戻し手数料」をもらう余地がないからである。

 むしろ、コンピュータの容量の増大に伴って、運送・宿泊機関等に関する情報を大量にインプットできるようになったことから、旅行者は自由に航空機と必要なホテルのみのスケルトンのツアーを作ることができるようになった。こうした単純なツアーについてまで、旅行会社が旅程管理、旅程保証、特別補償の責任を負担しなければいけないのかという点は大いに議論の余地があるといえる。先に、「本質的な質問」と呼んだ所以である。この点についての観光庁の解釈は、先に引用した旅行業法施行要領にあるように、旅行業者が旅行素材を予め選んでいるという点に募集型としての根拠を求めている。しかし、紙の時代のいわばカタログに記載された限られた、正に旅行会社が選んだといえる情報から選ぶのとは量的には大きな違いがある。量は多くなれば、質へと転換する時点があるという、この問題は業界全体で検討する価値があるように思われる。法的には、旅行業法と標準旅行業約款の内容の双方に関わる問題だけに、実務から問題の所在につき声をあげていかないと動かない問題である。


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三浦雅生 弁護士
75年司法試験合格。76年明治大学法学部卒業。78年東京弁護士会に弁護士登録。91年に社団法人日本旅行業協会(JATA)「90年代の旅行業法制を考える会」、92年に運輸省「旅行業務適正化対策研究会」、93年に運輸省「旅行業問題研究会」、02年に国土交通省「旅行業法等検討懇談会」の各委員を歴任。15年2月観光庁「OTAガイドライン策定検討委員会」委員、同年11月国土交通省・厚生労働省「「民泊サービス」のあり方に関する検討会」委員、16年1月国土交通省「軽井沢バス事故対策検討委員会」委員、同年10月観光庁「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」委員、17年6月新宿区民泊問題対策検討会議副議長、世田谷区民泊検討委員会委員長に各就任。