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JTB、21年度は284億円の最終黒字、本社ビル売却が寄与、22年度は営業黒字へ

  • 2022年5月27日

 JTBは5月27日、2022年3月期(2021年度)の連結決算を発表した。純利益は284億円(前年は1051億円の赤字)で、2年ぶりの黒字となった。売上高は前年比56.5%増の5823億円。営業損失は49億円と2期連続の赤字だったが、構造改革によるコスト削減で前年の975億円の赤字から大幅に縮小、経常利益は前年の742億円の赤字から39億円の黒字に転換した。中核である旅行事業の低迷が続くなか、本社ビルや株式の売却等による特別利益により最終黒字を確保した。

 今期の売上高は前期比74.3%増の1兆150億円、営業利益は63億円と黒字化を見込む。回復基調にある旅行需要の獲得と、旅行以外の領域の拡大を両立し、2期連続の最終黒字を目指す。

JTB代表取締役 社長執行役員の山北栄二郎氏

旅行外の事業で営業損失を改善、構造改革も進捗

 21年度は前年に引き続き新型コロナウイルスの影響下にあり、旅行需要は一時的に回復傾向にあったものの、海外旅行、訪日旅行は2年連続でほぼ消失した状態が続いた。JTBでは会議・イベント運営や観光地支援、BPOサービスの受託など、旅行以外のビジネスソリューション事業に注力。BPOサービスではワクチン接種の会場運営や療養施設の手配などが約8割を占め、売上を牽引した。商品・サービス別に売上高を見ると、旅行事業が2109億円(うち1749億円が国内旅行)、旅行以外の事業が3714億円と、旅行以外の事業が旅行事業を大きく上回った。

 また、中期経営計画で掲げる構造改革の一環として、22年3月末までに海外拠点を257拠点、国内店舗を145店舗減少。コロナ禍以前には3万人弱だった従業員は約9100人減らした。JTB代表取締役 社長執行役員の山北栄二郎氏は、「2年間、社員にも大きな負担をかけながら構造改革を断行してきた。困難な環境のなか、お客様に寄り添い、営業に邁進し、新規事業に取り組んでくれたことが成果につながった。社員、事業パートナー、業界全体で力を合わせて困難を乗り切ったことに感謝をしたい」と総括した。

国内旅行はコロナ前の水準まで回復、海外・訪日旅行は秋以降の復活を見込む

 今期の旅行市場については、国内旅行はある程度感染症が抑制された状況を前提に19年度比9割から同水準まで、海外・訪日旅行は秋以降の渡航制限・入国制限の解除を前提に同2割から3割まで回復すると想定する。

 国内旅行では県民割・ブロック割などの需要喚起施策が継続されることを見込む。訪日旅行については、政府の観光客受け入れ再開の発表や円安を追い風に、米国、欧州、豪州などは早い段階でコロナ前に近い水準に戻ると予測。一方海外旅行は、円安や燃油の高騰、ヨーロッパの迂回などによる価格の上昇により、「非常に強い需要は感じるものの、全面回復は訪日旅行より遅くなるのではないか」(山北氏)との見解を示した。

BPO案件はコンテンツ開発や観光地整備へ、訪日再開に向け受け入れ整備にも注力

 21年度に旅行以外の事業を支えたコロナ対策関連の業務は、感染症の収束に伴い減少すると想定されるが、山北氏は、「これまで様々な形で企業や行政の課題に踏み込んできた。今後は観光振興に関わるコンテンツ開発や観光地整備などがBPO案件として出てくる」との見方を示す。たとえば訪日旅行の再開に向けては、オーバーツーリズムなどの問題を解決するための受け入れ体制の整備が求められる。同社では訪日実証ツアーにできる限り参画しながら、アドベンチャーツーリズムなどの地域コンテンツの開発や、それらの商材をスマートフォンで購入できるデジタルプラットフォームの整備、二次交通の整備など、地域の周遊、訪問地の分散につながる仕組みを整えていく考えだ。

給与の削減を終了、新卒採用も23年度より再開へ

 JTBでは「20年度から進めてきた構造改革は予定を上回る結果を残すことができた」(山北氏)として、4月には21年度は3割減としていた給与を元に戻し、業績成果配分の形で賞与に代わる手当ても支給した。6月にも同様の手当の支給を予定している。今後の賞与については未定だが、予算化しており、グループ会社毎の業績に応じて支給していくという。

 23年4月からは新卒採用も再開し、グループ全体で300名程度の採用を想定している。山北氏は「観光産業全体で人材の課題が大きくなってきている」として、中途採用も含め、業界の人材育成に貢献していく考えを示した。

役員人事も発表、中期経営計画第2フェーズを加速

 JTBでは会見同日、役員人事の内定も発表した。新たな取締役として、経営戦略を担当する青海友常務執行役員、エリアソリューション事業を担当する森口浩紀常務執行役員が就任するほか、独立社外取締役として山中雅恵氏が就任する。一方、5月31日をもって小林高広氏が、6月30日の定時株主総会をもって田川博己氏が取締役を退任する。また、監査役には、5月31日をもって退任する光山清秀氏に代わり、小林高広氏が就任する。

 同社は今年度より中期経営計画の第2フェーズに移行しており、ツーリズム、エリアソリューション、ビジネスソリューションの3つの事業戦略を新体制で一層加速する考えだ。

※訂正案内(編集部 2022年5月30日9時37分)
訂正箇所:第10段落第2文
誤:エアソリューション事業を担当する森口浩紀常務執行役員

正:エリアソリューション事業を担当する森口浩紀常務執行役員
お詫びして訂正いたします。