itt TOKYO2024
itt TOKYO2024

業界ニュースを振り返る ー 旅行会社の生き残れる道なんて二択しかない

 情報の開示を焦点とされた柴田氏の今週のコラム、私としては前々から二択だと思っているところだったのでここぞとばかりに語らせていただきます(皆様が気にされているかは置いておいて、一応今週のトップ記事ベスト10に触れるというお題目なので好き勝手は書けないのです)

 私の狭い視野で言えば、この観点で旅行会社が生き延びる道は大きく2つしかないと思っています。まず1つは、範囲を狭くして圧倒的な旅行会社としての情報やコネクションを駆使して勝負する方法です。コメントで書かれている方々もおられるように、全ての地域全ての施設で、全ユーザーが情報提供者となり得る現代に情報の新しさや量で勝つのは不可能です。InstagramやTwitterでバズらすのがマーケティングの1つの王道である時代に、一企業がマーケティング専門でもないのにクローズドで情報の新しさやらで勝つのは不可能です。

 でも、例えば過去に取り上げさせて頂いた静岡の掛川市ですが、こちらは川の横でテントサウナとBBQを行える、一部のサウナーからは奇跡のようなワーケーションの場所があるんですね。テントサウナで水風呂の代わりに天然の川なんて、一部のサウナーは涎を垂らすくらい希少です。もちろん、決してワーケーション施設自体の小綺麗さ等は東京やら地方都市ど真ん中のサブカルっぽいおしゃれなところと比べると負けることもあろうと思いますが、時折会議や打ち合わせには出るくらいの7割バケーションというケースならば、首都圏からの交通の便も考えるとこんなに完璧な場所はないなと思っています。

 でも、この情報や実際にワーケーション施設のどこに泊まって、どこでBBQの相談をしていいのか、何が美味いのか、事前に何を持っていったら良いのかを知っている方は私が知る限り、かけがわ粟ヶ岳山麓農泊推進協議会の山田氏しかいません。旅行業界の中でも非常にニッチなわけです。こういったポジションを各旅行会社が狙うのが今後の生きる道の1つだと考えています。嫌でも人が大量に集まってSNSに情報が投稿される場所は捨てて、ちょっとニッチなところに行きたい層に行きたい方々をターゲットにする道です。これが、従来の旅行会社のあり方とも親和性が高いのではないかと思っています。ただし、スケールして大きく稼ぐことはなかなか難しいとも思います。

 もう1つは、IT業界などに寄せた意見ですがそもそも情報量やら技術やらで勝負しないという方法です。これはある意味で非常にシンプルで、UX(ユーザエクスペリエンス)だけを重視するという考えですね。私がまだ旅行業界にいた頃に取材させて頂いた北海道で推されているアドベンチャートラベルなんかがこれに当たると思っています。

 しかし、これははっきり言って非常に難易度が高い。地元のインストラクターのレベルや言語能力、受け入れのキャパシティと顧客が求める本質的な何かを察してそれに答えられる物語を持ったストーリーをツアーで作りだす能力が必要です。これがあれば、今のSNSなんかで手に入る情報などとは別次元で勝負できますし、消費単価の大きいお客さんを相手にできるのでSNSの情報に飛びつく方々の動向は無視できます。

 もちろん、令和トラベルのようにこれまでの薄利多売でメソッドをアップグレードしたような方法も一定数生き残れるとは思いますが(そもそも令和トラベルが今後もそれを続けるとは思っていませんが)こんなところははっきり言って既存の旅行会社に勝ち目はないと思っています。過去にOTAという黒船に市場を大きく奪われたように、マーケティングやテックのスキルに優れた新たな黒船にかっさらわれるだけです。言っちゃあなんですが、私みたいなネットで出来得る限り安い交通手段と出来得る限り安いホテルをとるような利益にならない層は放置するのが、どの道に進むにしても旅行会社の正道だと思っています。