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旅行事業と地域商社事業の2本立てでウィズ・アフターコロナの市場に挑む-たびまちゲート広島 長沢伸彦氏

  • 2022年6月6日

安売りや価格競争の意識は排除
地域商社事業部と連携して独自のツアー造成を展開

-事業ポートフォリオの変更が眼目ではなかったとのことですが、地域商社事業を手掛けていたことが、結果的にコロナ禍のダメージを和らげる効果があったのでは。

長沢 当社は3月決算で、前々年度の決算がコロナ禍でかなりダメージを受けたものの、前年度は比較的良好な決算内容になりました。地域商社事業を手掛けて事業を多角化していたことで補えた部分があったのは確かです。

-コロナ収束後の旅行事業の展望や戦略について考えをお聞かせください。

長沢 コロナ禍によってクローズアップされたマイクロツーリズムをさらに深掘りしていきます。地元の旅行会社だからこそ、県内や隣県に存在する、テーマ性あるコンテンツが体験できる目的地を発掘し、ツアー造成を図っていく考えです。こうした取り組みを、地域創生に携わる地域商社事業部と連携して行えることは当社の強みだと思います。

 これまでに好評だった商品はさらに強化します。たとえばFDAのチャーター機材を使ったツアーは8年ほど前から続けていますが、広島空港からの定期直行便がない遠隔地域や離島を目的地として企画し、隠岐や八丈島、夏の北海道などへのツアーが人気を博してきました。こだわっているのは自社のみで売り切ることです。複数の旅行会社でチャーターすれば販売は楽になるかもしれませんが、自社の価格ポリシーを貫くのが難しくなりかねません。それでは意味がありませんから、しんどくても自社で売り切るようにしています。旅行の内容も価格も、他社と競って得るものは少ない。あくまでも自社の特色を生かした商品展開と価格帯で勝負していきたいと考えています。

 プレミアムバスを使った長距離バスツアーも毎年1本は実施しており、これも好評です。使用するバスは、1列当たり1席+2席(計3席)の配列で全24席、シートは本革、トイレ付きという、ゆったりデラックスな仕様。今年は10月に、往路をバスで広島から北海道まで縦断し、復路は飛行機で帰る「プレミアムバスで行く 美しき日本縦断 7日間」を実施します。また「プレミアムバスで行く 秋色の東北縦断 5日間」は、往路を飛行機で北海道へ飛び、復路はバスとフェリーの行程で実施します。値段はいずれも30万円前後で、他社にない商品として価格設定にこだわっています。

-独自商品で価格にこだわることは理解できますが、値付けが難しそうです。

長沢 確かに値付けは難しいです。しかしこれまでの実績と情報の蓄積があります。またツアーに参加したお客様のアンケートからも、価格に対する様々な意見が得られます。これに新聞広告やウエブ告知の反応も含めて専門部署が分析し、フィードバックした内容を値付けの参考にしています。高すぎればお客様は離れてしまいますから、基本は「ちょっと贅沢めを提供する」こと。ただし安売りや価格競争をする意識は排除しています。

-それが今後の旅行会社のあるべき姿だと。

長沢 全国規模で事業展開する大手旅行会社と同じ土俵では勝負にならないという事情もあります。またウィズコロナで旅行を動かしていくためには乗り物、ホテル、食事、観光、体験などあらゆる場面で3密回避などの対策が必要になり、コストアップを回収しなければなりません。その意味でもこれまで以上に付加価値を高め、顧客満足度の高い商品を適正な価格で販売しなければなりません。

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