コロナ禍を超えて、旅行をいかに再発見するか世界の知恵を結集-WTTCグローバルサミット2022

Redefining Travel in a changingWorld 変化する世界での旅行の再定義

【パネリスト】
フィリピン観光大臣 ベルナデッド・ロムロ・プヤット氏
マリオット・インターナショナル・グループ・プレジデント クレイグ・スミス氏
ドバイ国際空港CEO ポール・グリフィス氏
ザ・グローバルレスキュー・カンパニーズCEO ダン・リチャーズ氏
【モデレーター】
ジャーナリスト&WTTCアンバサダー キャサリン・マシューズ氏

 世界的なワクチン接種の進行に伴い旅行・観光需要の回復が期待されるが、コロナ禍を経て需要そのもの、あるいは産業構造そのものが大きく変化するものと考えられる。そこで旅行・観光をどのように再定義しコロナ後の新たな市場に対応していくのかを議論した。

旅行の再定義のセッション

 コロナ後の変化として認識すべき要素についてフィリピン観光省のプヤット大臣は「まずは健康と安全が大前提となる」としたうえで、「持続可能性をより強固なものにしていく必要があり民間セクターと官の協力・連携が求められる」と述べ、これまで以上に官民連携の重要性が増すと指摘した。さらに政府内では改めて旅行・観光産業の重要性に対する認識が共有されたと説明した。

 またドバイ国際空港のグリフィス氏は「コロナ禍を経験して空港はインフラビジネスであると同時に、カスタマーサービスのビジネスであると改めて思い知った。官僚主義を排除し、カスタマーフレンドリーなビジネスをおこなうことが何よりも重要になる」と意識変化の必要性を説いた。

 危機管理の専門家であるリチャーズ氏も、旅行者の懸念材料は感染への不安だけでなく、むしろ規制の複雑さや官僚主義的な対応にあると指摘した。また「コロナ禍の18カ月間を振り返り教訓を学ぶべき。たとえば当初12カ月間はまともなデータもない状態が続き、リーダーがリアルタイムの決断をできない状況だった。こうした点は改めておかねばならない」とも指摘した。

 マリオットのスミス氏は、コロナ下での旅行を可能にするための各種書類や手続きの煩雑さを挙げ、「何枚もの書類を作成したり提示するストレスは大きく、ゲームチェンジが必要。モバイル端末などを有効に活用し円滑な手続きができる工夫をしていくべき」と、新型コロナウィルスに限らず他の感染症の発生なども考慮して新たな仕組みを用意しておく必要性に言及した。

The Businessof Travel ビジネストラベル

【パネリスト】
JTB会長 高橋橋広行氏(※高ははしご高)
トゥーレスパーニャ・ディレクタージェネラル ミゲル・サンツ氏
マスターカード副社長 ダン・ジョンソン氏
プエルトリコ・ツーリズムカンパニー・エグゼクティブデイレクター カルロス・メルカド・サンチアゴ氏
ニブ・トラベルCEO アナ・グラッドマン氏
【モデレーター】
インターナショナル・ブロードキャスター ゼイナブ・バドウィ氏

 19年には世界の旅行需要の21.4%を占め1.3兆ドルもの規模を持っていたビジネストラベルだが、コロナ禍が後押ししたオンラインコミュニケーションの進化により、コロナ後もどこまで需要が回復するのか、期待と不安が半ばする。

ビジネストラベルのセッション

 コロナ後のビジネストラベルについてJTBの髙橋氏は「JTBはすでにトラベルのソリューションやオペレーションのソリューション提供だけに留まらず、顧客のビジネスソリューションを提供するよう方向転換している。ノウハウやスキル、経験の蓄積とホスピタリティがあり、この分野における可能性は無限大だと考えている」と発言。単純なビジネストラベルだけでなく、そこに付随する各種の需要を含めた幅広い関連需要の取り込みや創出を目指すJTBの基本方針を説明した。また「人と人の触れ合いはビジネスにおいて重要であることは変わらない。ただしその在り方は変化し元には戻らない」との見解を示した。

 これに対してマスターカードのジョンソン氏は「人々はコロナ禍を経てリモートでもビジネスが可能だと分かった。それでも人と人が合えばビジネスは加速し、人が集まれば偶然の出会いが新たな可能性を運んでくれる。対面の会合を再開したい者は多い」とビジネス旅行需要の回復に楽観的な見通しを示した。

 トゥーレスパーニャのサンツ氏は「ビジネストラベルにも、もちろん未来はあるがレジャーのそれとは異なるはず。ZOOMのような新たなライバルが出現しており、旅行業界も新しいビジネストラベル商品を開発することも求められる」と述べ、ニブ・トラベルのグラッドマン氏も「ビジネストラベルは保険や税制などもからみ複雑化しており、リモート会議やワーケーションといった変化も起きている。こうしたさまざまな変化をキャッチアップしなければ生き残れないことだけは間違いない」と変化の重要性を説いた。

 またプエルトリコ・ツーリズムカンパニーのサンチアゴ氏は「今後求められるビジネストラベルのポイントは3つ。『健康と安全』『仕事だけでなくアクティビティが楽しめるか』『移動がいかに円滑か』だが、重要なのは仕事だけでなく、加えて何を提供できるか。そこにかかってくるのでは」との問題意識を提示した。

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