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コロナ禍を超えて、旅行をいかに再発見するか世界の知恵を結集-WTTCグローバルサミット2022

New Trends on the Block 新しいトレンド

【パネリスト】
観光庁国際観光部長 金子知裕氏
AIGトラベル CEO ジェフリー・ルトレッジ氏
YouGovトラベル&ツーリズム グローバル・セクターヘッド エバ・スチュワート氏
TBOグループ共同創業者 ガラブ・ブトナガール氏
ホテルプランナー&ミーティングス・ドットコム CEO ティム・ヘンスケル氏
【モデレーター】
トラベルウィークリー編集長 アーニー・ワイズマン氏

 コロナ禍によってリモートワークやワーケーションが広がり、旅行者の健康や安全への意識も高まった。さらに人々のSDGsへの意識も高まり、気候変動や環境破壊を進めてしまわない旅行形態への要望も高まりつつある。こうした変化は新たにどのような旅行・観光の形を生み出すことになるのか。

新しいトレンドのセッション

 観光庁の金子氏は日本のインバウンド市場の変化に言及。「コロナ禍前は訪日外国人の60%が東京、大阪、京都に集中し、ローカルへの誘客が課題となっていた。その意味で23年に北海道でアドベンチャーツーリズムのワールドサミットが開催されるのは大きなチャンスであると期待している」と述べ、コロナ後は日本の新しい観光アピールとしてアドベンチャーツーリズムにも力を入れていく方針を示した。

 MICEなどに詳しいヘンスケル氏は、コロナ後はこれまで以上に自然を求めるデスティーション選びの傾向が強まると予想し「たとえばタイでは混雑しているビーチリゾートにも高い関心が持たれていたが、コロナ禍の発生後は旅行者が集中しない場所に目が向くようになっている」とMICEオーガナイザーのマインドの変化を説明した。

 気候変動や環境破壊への旅行者の意識変化についてはWTTCの調査結果として、カーボンネガティブ旅行(旅行によってCOS排出量の増大を招かない)に関心があるとの回答者は全体の55%に留まった。この結果についてデータ分析の専門家であるYouGovのスチュアート氏は、調査がカーボンネガティブという耳馴染みのない単語でおこなわれたことで数字が低めに抑えられた可能性があるとし、より普及しているサステナブルツーリズムやレスポンシブルツーリズムといった言葉を使えば結果が変わった可能性があるとした。

 その上で「当社の推計ではエコフレンドリー、サステナブルな商品の購入に当たって消費者が許容する価格の増加範囲は10%増まで。サステナブルが日常に根付いているスカンジナビアでも、ホリデー旅行については(サステナブルより)リラックスを優先する傾向がある。レジャーとサステナブルを両立する知恵が求められている」とした。

 TBOグループのブトナガール氏は環境問題が深刻なインドではコロナ禍が変化のきっかになっているとし「コロナ禍のロックダウンで大気汚染が軽減された。その変化が、気候変動はまだ阻止できると人々に認識させる力になった」と自らの体験を紹介した。

 AIGのルトレッジ氏は保険の観点からコロナ禍の旅行者の動向を分析。「市場によって保険のニーズは異なり、たとえばドイツはキャンセルが発生した際のリスクを補うために保険を掛ける旅行者が多いのに対して、日本は医療が必要になった場合に備える目的での保険を掛ける旅行者が多い」と市場によって保険に求めるポイントが違う点を説明した。