NDC最前線を紹介、海外の活用事例と航空会社の現状-バーテイルがシンポジウムを開催
インドのNDCアグリゲーター「バーテイル」の日本法人、バーテイルジャパンはこのほど、「NDC Live!(ここまできたNDC!)」と題した旅行・航空業界向けシンポジウムをオンライン開催した。シンポジウムには旅行会社や航空会社などから約300名が参加。冒頭登壇したバ-テイルジャパン代表取締役社長の上甲哲也氏は、コロナ禍でも航空会社各社がNDCへの取り組みを強化していることを説明。理由として「航空会社が多様化する消費者のニーズに応えるため、ブランデッドフェアやアンシラリーサービス、ダイナミックプライシングなどを駆使して差別化した商品による競争へと明確に戦略を転換した」ことをあげた。
消費者のニーズについては、消費行動の変化を指摘。Z世代、ミレニアム世代が増加するなか、「モノ消費」から「コト消費」、社会・文化的価値を重視する「イミ消費」に移行しいることに触れ、「今までの流通テクノロジーではこうした市場ニーズに多様な選択肢と必要な情報を与えられない」とNDCの重要性を強調。「NDCは顧客志向の改革だからこそ持続的に大きな原動力をもって進んでいる」と話した。
シンポジウムではバーテイルジャパンセールス&マーケティングマネージャーの石井宏明氏が、同社のプロダクト「バーテイル・ダイレクト・コネクト(VDC)」を紹介した。VDCはウェブアプリ版とAPI接続版を提供しており、シンポジウム時点での接続航空会社数はLCC3社を含む33社。今年の9月までにはハワイアン航空(HA)やエールフランス航空(AF)/KLMオランダ航空(KL)など8社と接続する見通しで、23年には40社以上がパートナーになる予定という。
VDCの支払方法はクレジットカードやBSP精算など。利用料は一部の航空会社は無償、それ以外は1発券1人あたり税別220円で、予約のホールド、追加、変更、取り消しなど発券後のサービスに関する手数料はかからない。ホールセラー向けには「コンソリデータモデル」を提供しており、リテーラーに対し、予約発券依頼を受付する航空会社を設定し、運賃種別ごとなどさまざまな条件でマークアップできるという。加えて石井氏はVDCが業務管理システムとデータ連携でき、GDSのAPIや売上管理システムのフォーマットへバーテイルがデータを変換して提供できる点をアピール。日本語でのカスタマーサポートも充実しているという。
UAEと英国の旅行会社がNDCの活用状況を紹介、英国は8割がNDC
シンポジウムでは「海外の旅行会社が取り組むNDC・旅行業におけるデジタル化戦略」として、バーテイルの取引先2社のインタビュー動画を放映。各社がNDCの価値や影響、旅行業におけるデジタル戦略などを語った。
UAEの「dnata Travel」からは、グローバルエアサービス担当副社長のサイモン・ウッドフォード氏が参加。同社は1959年創業のエミレーツグループの旅行会社で、旅行のリテールに加えてグランドハンドリングやカーゴ事業なども展開している。
ウッドフォード氏は、「ポストコロナを生き残るためにテクノロジーを強化している」と説明。「コロナ以前からの世界で最も称賛されるトラベルサービスプロバイダーをめざすという目標は変わらず、ブランドの強さ、顧客からの評価・評判を活かそうとしている」と話した。そのための差別化戦略として、NDCを用いた航空商品の供給や種類を増やし続ける考えだ。
NDCについては「顧客の購入する商品の選択肢が増え、旅行体験が豊かになり、旅行会社の販売する選択肢も増える」と語り、「NDCがめざす最終的なものは旅行会社と顧客のエコシステムに、より多くの商品・サービスを提供すること」と主張。NDCの拡大は、「仕入れようとするチャネル・セグメントや検索ボリュームの多さに依存する」と語り、今後の航空会社の取り組みに期待を示した。NDCに移行した取引については「今は非常にパーセンテージは少ないが、ここ数年で増えることは明らか」とコメント。「OTAのビジネスはNDCにプラグインしやすい」とも話した。
英国のコンソリデーターでレジャーや業務渡航なども取り扱うCitibond Travelからは、ヘッドオブオペレーションを務めるハサナリ・シェリフ氏が参加した。同氏は英国の旅行業界が回復してきており、同社もホールセラー事業については2019年レベルに戻りつつあることを説明。コロナによる旅行の低迷期に、将来の市場回復を見込みNDCを含むテクノロジーに投資したことに触れ、「低迷期に準備したあらゆることにより、今はより大きなマーケットシェアを獲得できた」と喜びを示した。
NDCについては「他社と違うコンテンツがあるので、十分な競争力があった」とコメント。NDCを活用することで予約後のサービスも可能になり、英国の薄利多売のコンソリデータ市場で優位に立てたという。NDCについてはホールセラー事業で活用しており、「接続できているリーダーボードエアラインの80%はNDCによる取引」とした。今後はNDCのツールが成熟したことで、法人向けのアフターサービスなど、業務渡航でもNDCを活用する予定。同氏は「すべての法人顧客でNDCを利用するまではいかないが、導入は進んでいる」とコメント。差別化されたコンテンツと発券後のサービスが可能であることなどが理由だという。
次ページ >>> 航空3社がNDCの現状を説明、NDC専用製品やカーボンオフセットサービス販売を計画