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NDC最前線を紹介、海外の活用事例と航空会社の現状-バーテイルがシンポジウムを開催

  • 2022年5月23日

CX、NDCで専用商品販売、「エアー+陸海交通」に注目

キャセイパシフィック航空の山田氏

 セミナーではキャセイパシフィック航空(CX)中部旅客営業部の山田智之氏が同社のNDCの状況について解説。CXではNDCを活用して手荷物や事前座席指定、ラウンジパスやインターモーダル輸送(航空会社と陸上・海上移動など複数の輸送手段の組み合わせ)の追加などアンシラリーサービスが手配できることを説明した。また、CXが昨年9月から導入している新しいエコノミークラス運賃についても、「従来のGDSでは1画面で(3種とも)確認できないし、最安値運賃しか引っ張ってくれない」が、NDCでは一括で3種類表示できるためプロモーションしやすいことを利点として述べた。

 さらに、同氏はインターモーダル輸送に注目していることを説明。広東・香港・マカオなどを含む粤港澳大湾区(GBA)へは香港をハブとしたフェリーやバス、鉄道での移動が便利であることを語り、NDCでの販売に期待する考えを示した。なお、香港国際空港では2022年内の完成をめざしインターモーダル・トランジット・ターミナルを建設中。ターミナルが完成すれば香港経由でバスにマカオに行く際、香港での入国手続きが不要になるという。

 最後に同氏は、現在欧州を中心にVFRなどセグメントによっては8割がNDCに切り替わっていることを説明。CXとしてもNDCで対応できない機能をなくすよう順次システムを改修しているという。今後はNDC専用のプロダクトやコンテンツを拡充し、NDCのみで販売するサービスや料金を導入する予定。CXのNDCへの接続を早期に決定した旅行会社にはアドバンテージも提供する。なお、GDSについては「GDSにしかできないものはあるので、GDSサーチャージについて導入予定はない」とした。

UAとAYがCO2削減の取り組み説明、NDC活用でカーボンオフセット販売も

ユナイテッド航空の高橋氏

 「エアラインの環境問題への取組み&旅行業における間接流通の役割」と題したパネルディスカッションでは、ユナイテッド航空(UA)とフィンエアー(AY)が各社の活動を紹介するとともに、NDCを活用した環境問題への取り組みについて考えを述べた。モデレーターを務めたバーテイルの上甲氏は、世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約2%から4%は航空産業が占めている現状を語り、航空会社各社がCO2排出量の削減に取り組んでいることを説明。ビジネストラベルの現場でも、企業はサプライヤーチェーンに関わるCO2排出量を報告する義務があることを触れ、航空業界における環境問題の重要性を指摘した。

 パネリストとして参加したUA営業企画部部長の高橋秀明氏は、UAが2050年までに温室効果ガス排出の100%削減をコミットメントしたことを紹介。持続可能な航空燃料(SAF)の開発に投資し、昨年12月にはSAFを100%使用したフライトにも成功したことを説明した。ただし、現在の航空業界の流通システムで差別化が難しいこともあり「サステイナビリティが旅客の購買行動に大きく寄与しているところはない」という。

 今後はNDCを活用して差別化をはかる方針で、サステイナビリティへの取り組みを強化する企業などをターゲットに、カーボンオフセットのアンシラリーサービスをNDCを通じて販売する計画。高橋氏は「カーボンオフセットのアンシラリー販売は、販売パートナーの旅行会社や企業にメリットを提供できる」と話した。

フィンエアーの木下氏

 一方、AYからは東京旅客営業部課長の木下俊作氏が、欧州では環境負荷が高い交通手段を避ける傾向があり、「飛び恥」という言葉が広がっていること、フランスで4月から列車で2時間半以内に移動可能な距離の国内線を廃止する法律が施行されたことを説明。AYでも2025年までにCO2排出量を半減、2045年にカーボンニュートラルの実現を目標にしている。

 また、木下氏は法人客向けの取り組みとして、顧客の行程内で旅行完了までのCO2排出量の開示システム構築が必要であるとし、「流通の方でシステムを構築してもらえば、友好的に市場に浸透するのでは」と語った。

 こうした意見を受け、上甲氏は「航空会社の取り組みが旅行者に伝わり、環境に優しい価値を持つ商品を選んでもらうための情報提供をどうするか、流通が大きく関係し役割を担っていくのでは」とコメント。そのためにNDCが役に立つのではと期待を示した。