ハワイが目指す持続可能な観光とは?各地で育まれる「マラマ」から考える

  • 2022年5月25日

 ハナウマ湾の入場料は、2021年7月より、これまでの12ドルから25ドルに引き上げられた。また、1日の入場者数は1400人に限定されている。混雑緩和のため2021年4月よりオンライン予約システムが導入され、来場者は10分毎のスロットで入場する仕組みだ。チケットは訪問日の48時間から予約可能だが、開始数分で完売するという。350名分は当日券として販売されるため、予約できなかった場合は開場前から並べば入場できる可能性がある。なお、学校教育等で事前に申請した場合を除き、一般の団体は受け入れておらず、1回に予約できるのは大人5人、子ども5人まで。入場後は営業時間一杯まで滞在可能だが、一度退出すると再入場は認められない。

 入場者数の制限は感染症対策の意味もあったが、ハナウマ湾では観光と自然環境とのバランスを取るため、今後も人数制限と予約制を継続する予定だという。入場料並びに3ドルの駐車場代金は湾の保全に使われる。ハナウマ湾を拠点に環境保護活動を行うNPO団体「フレンズ・オブ・ハナウマベイ」のリサ・ビショップさんは、「コロナ禍の影響で自然が戻り、ハワイの人々の意識も変わった。これからは環境保護に貢献したいというマインドセットを持っている方に訪れてもらいたい」と語った。

ハナウマ湾の入口にあるエデュケーションセンター。入場前にはオリエンテーションビデオの視聴も義務付けられており、湾の歴史や自然、環境保護活動への理解を深めることができる。

サンゴ礁に有害とされるオキシベンゾンとオクチノキサートを含む日焼け止めの使用は禁止されている

シーライフ・パーク・ハワイ-希少性生物との付き合い方を知る

 ハナウマ湾にほど近いマカプウ岬に位置するシーライフ・パーク・ハワイは、様々な海洋生物を見るだけでなく、その生き物が園に来た由来や生態、人間の生活が与える影響などを楽しみながら学ぶことができる体験型のマリンパークだ。環境保全にも力を入れており、絶滅危惧種のアオウミガメや傷ついた海鳥の保護なども行っている。特にアオウミガメの繁殖においては、これまで1万7000匹を超える子ガメを海に帰し、ハワイの海での頭数の増加に貢献しているという。

電信柱や樹木の伐採、夜間の照明などで傷ついた海鳥を保護、手当し、自然に帰している

 昨年には、絶滅危惧種と知らずハワイアンモンクシール(アザラシ)に触れた観光客の動画が炎上した事例もあった。こうした施設で希少生物との距離の取り方を学んでから観光スポットを訪れると、より安心してハワイを楽しむことができるだろう。

気性が荒く、仲間を傷つけてしまうことから園に保護されたハワイアンモンクシール

クアロア・ランチ-ロケ地巡りだけではない多彩なアクティビティ

 ワイキキから車で45分、オアフ島東部に位置するクアロア・ランチは、『ジュラシック・パーク』や『ロスト』など、映画やドラマのロケ地として知られている。プライベートビーチを含む約500万坪の広大な敷地内では、ロケ地ツアーをはじめ、乗馬ツアーやジップラインツアーなど様々なアクティビティを体験できるが、近年はサステナビリティにも注力。絶滅危惧種を含む鳥の調査やコアの植樹、在来植物の栽培、牡蠣の養殖など、環境やコミュニティをサポートするプロジェクトを推進しており、ハワイ固有の動植物や文化、農業などについて学ぶことができるツアーも人気を集めている。

農業や生態系の保護を通してSDGsにも力を入れるクアロア・ランチのジョン・モーガン社長

絶滅危惧種の鳥アラエ・ウラ。コロナ禍で観光客が減り、敷地内でも毎日のように見られるようになったという。

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