「伝統×最新技術」「SDGs」で進化を続けるフランス・パリ、観光再開に向け日本は重点市場

 2022年3月末にトラベルマート「ランデヴー・アン・フランス(RVEF)」を3年振りに開催し観光再開の狼煙をあげたフランス。そして首都にしてフランス観光の代表格であるパリもまた、リカバリーへと歩みだしている。コロナ禍による海外旅行停止から約3年、パリ市内には新規あるいはリニューアルオープンをしたスポットもお目見えした。2022年3月23日から25日にRVEF後に行われたポストツアーで紹介された注目の観光素材を中心に、パリの取り組みを紹介する。

旅の飢餓感溢れた心には、定番ランドマークの姿もおおいに染み入る

コロナ禍により日本人訪問者は10分の1に

デクルー氏

 まずパリの現状から見てみよう。パリ地方観光局局長のクリストフ・デクルー氏によると、コロナ禍前の2019年にパリを訪れた観光客は、国内外あわせて約5000万人であったが、新型コロナウイルスの蔓延により2020~2021年の2年間でフランスの国内旅行は約50%減、海外旅行は約70~80%減となった。年間約50万人を数えた日本人客もこの2年間で10%程度の約5万人へと激減した。

 今後、パリ地方観光局は観光再開へ向け、アジアでは日本と韓国を重点地域としてプロモーションをおこなっていく考えだ。「とくに日本市場は高い価値観を持つ消費者を有する重要市場。プライオリティはパンデミック前と変わらず高い」とデクルー氏。2015年の同時多発テロを機にパリでは危機管理対策が整備され、また今回のコロナ禍により美術館などの観光施設やレストラン、ホテルなどでは衛生管理にも配慮されていることに言及し、「観光客を迎える準備は整っている」と述べた。

 今後は芸術や歴史・文化、ライフスタイルなどパリの多様な魅力を引き続き発信していくほか、2024年のパリ・オリンピック&パラリンピックも観光リカバリーの重要な契機として捉える。さらに2023年ラグビーワールドカップも「パリや地方を組み合わせた商品造成を期待している。旅行会社にはツアー造成の新たなアイデアの提案やサポートなどを積極的におこなっていきたい」と語った。

「アトリエ・デ・リュミエール」は芸術の都が魅せる新感覚の絵画鑑賞

「アトリエ・デ・リュミエール」。伝統的な絵画鑑賞とデジタル映像のハイブリッドともいえる新たな芸術鑑賞スタイルだ

 観光業再開のポストツアーで取り上げられた素材は美術館、ホテル、百貨店で、共通項は「歴史的建造物の再利用」。いずれも知恵と芸術的感性を駆使した伝統と最新技術の融合、いわば持続可能なSDGsに則った観光開発がなされているものだ。

 まずバスティーユ広場に近い11区に建つ「アトリエ・デ・リュミエール(Atelier des Lumières)」は、2018年にオープンしたデジタル映像で名画を体感するアトラクションだ。建物は19世紀に産業革命を担った鋳物工場跡地で、約3300平米の広大な広間全てをスクリーンとし、ゴッホやクリムト、セザンヌなど画家をテーマとして、その作品を投影する。

 上演時間は長短3本、休憩を挟みながらおよそ1~1時間半。セザンヌの力強い筆致を再現しながら投影される静物画や風景画、カンディンスキーの幾何学的世界を浮遊し漂う謎の物体など、部屋いっぱいの映像に埋没しながら、新たな視点で絵画世界を体感できる。芸術ファンのみならず、幅広い層に提案できる新素材だ。

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