旅行会社は旅行情報をどこまで掲載するべきか?-RT Collection 柴田真人氏
第17回目のコラムは、「旅行会社は旅行情報をどこまで掲載するべきか?」というテーマで書いてみたいと思います。
先日、ラグジュアリーホテルに勤務をされていたプロのコンシェルジュの方とお話をする機会がありました。コンシェルジュのお仕事を通して今までご経験されたお話を聞いていると、プロ中のプロのお仕事ばかりで私にはそこまで対応できないだろうなという内容もたくさんあり、感心しっぱなしでした。そんなお話の中で、旅行会社はどこまで旅行情報を掲載するべきかという話題になりました。
その話題の背景には、お寺の非公開部分を見学できるツアーを催行している旅行会社がありました。非公開部分を見学できるツアーの仕入れはお寺との良い関係性がないとできないことでしょうし、参加者が非公開部分を見学できるのはツアーの参加への動機にもなります。日本人旅行者以外に訪日外国人旅行者にも好まれるツアーだと感じました。
そのツアー詳細をウェブサイトで確認してみると、その非公開部分の画像が数枚掲載されていました。一般公開されている場所の画像ならまだしも、非公開部分の画像まで掲載してしまうと「価値」が半減するのではと単純にその時思いました。個人的には旅行会社は旅行情報を画像も含めて詳しく掲載するべきだと思っていますが、「非公開」のようなコンテンツがツアー単価を上げてくれるものであれば、ツアー当日までのお楽しみとして、事前に画像の掲載をしなくてもよいと思います。そのため、今回の事例のようにその「価値」となる非公開部分の画像をウェブサイト上に掲載すべきか、あるいは掲載すべきではないかと問われると、私は掲載すべきではないと思います。その理由としては繰り返しになりますが、単純に「非公開」という価値がツアー単価を上げてくれるからです。その旅行会社が非公開部分の画像まで掲載した意図はわかりませんが、掲載することで情報を網羅しようとしたかもしれませんし、差別化あるいは特別感を出すための一環で掲載したかもしれません。
情報が乏しいと選択肢から外れることも
ここで本題の「旅行会社は旅行情報をどこまで掲載するべきか?」について考えていきましょう。このトピックになると、情報だけ取られてしまうという意見が必ず出るのですが、今の旅行者の購買行動においては非常に重要だと思っています。今ではインターネットやSNSで旅行情報を探すのは当たり前で、消費者行動も「注目⇒関心⇒検索⇒比較⇒購入⇒共有」のような流れになっています。特に検索や比較される段階で情報が乏しいと購入の選択肢から外れてしまう可能性があります。
例えば、海外旅行のツアーの予約を検討する際に次のようなことがあります。ツアーに組み込まれている宿泊施設の客室情報を確認したくて、旅行会社のホームページ内にその情報があるかどうかを確認してみると十分に情報がなく、その後、ホテル公式ホームページを見に行ったものの、そこでも情報を十分に得られず、最後には実際に宿泊した人の体験ブログや宿泊記を検索して、ようやく探していた客室情報を知り得たなんてことがあります。実際に宿泊した人の記事内容が最新なものか、そうでないかは別としても、旅行会社やホテル公式ホームページには掲載していない情報、つまり旅行者が知りたかった情報が個人ブログにはあり、最終的には個人ブログが情報を提供したということになります。
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