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【弁護士に聞く】宿泊単品の募集型企画旅行契約と手配旅行契約の違いは?

  • 2022年5月25日

宿泊単品の募集型の特殊性

 以上に対し、宿泊単品の募集型企画旅行契約は標準旅行業約款募集型企画旅行契約の部が予想していなかった契約形態である。同約款第2条は募集型企画旅行を「当社が、・・・あらかじめ、旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービスの内容並びに旅行者が当社に支払うべき旅行代金の額を定めた旅行に関する計画を作成し、これにより実施する旅行をいう」と定義しており、宿泊単品には旅行日程というべきものがないからである。では募集型企画旅行契約にはならないかと言えば、問題ないと言っていいだろう。理由は上記表を見れば分かるとおり、手配旅行契約より企画旅行契約における方が旅行会社の責任は重く消費者に有利になるから、旅行会社がそうした不利益を甘受してでも値付けをしたいというのであれば、契約自由の原則からいって問題はないからである。

 さて、前置きが長くなったが、質問者の質問は要約すれば、以下のとおりである。

 募集型なのにホテルから直に販売店へオーバーブックや部屋タイプの変更等の連絡が入る、OTAは手配旅行での販売なのに割引クーポンを発行して値引き販売を行っている、国内旅行の募集型のフリープランでは旅程管理業務を行う緊急連絡先がなく販売店が行うケースが多い、これらはおかしいのではないか。

 OTAの問題を除けば、契約自由の原則に従い、ホールセラーとリテーラー間の受委託契約(リテーラーが旅行業者代理業者の場合は、旅行業者代理業務委託契約)の中でお互いの業務範囲を定めておけば良い問題で、旅行業法上の問題ではない。問題は受委託契約等の中で明文がなく、事実上販売店が押し付けられているとすれば、事故等のあったときに困るので、明確にしておくべきである。OTAの例については、詳細が分からないが、OTAと宿泊施設間の契約の中で、宿泊代金の値引きクーポンの発行につき合意があれば問題はないだろう。勝手にOTAが値引きしているとすれば、値付けをしていることになるので、手配旅行契約ではなく募集型企画旅行契約と解釈されることになる。


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三浦雅生 弁護士
75年司法試験合格。76年明治大学法学部卒業。78年東京弁護士会に弁護士登録。91年に社団法人日本旅行業協会(JATA)「90年代の旅行業法制を考える会」、92年に運輸省「旅行業務適正化対策研究会」、93年に運輸省「旅行業問題研究会」、02年に国土交通省「旅行業法等検討懇談会」の各委員を歴任。15年2月観光庁「OTAガイドライン策定検討委員会」委員、同年11月国土交通省・厚生労働省「「民泊サービス」のあり方に関する検討会」委員、16年1月国土交通省「軽井沢バス事故対策検討委員会」委員、同年10月観光庁「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」委員、17年6月新宿区民泊問題対策検討会議副議長、世田谷区民泊検討委員会委員長に各就任。