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【香港現地レポート】見えない国境開放、現地旅行会社にも多大な影響

 2022年2月以降、香港での新型コロナウイルスの第5波は拡大を続け、感染者数が次々と最高人数を更新しました。多くの香港市民が中国本土に避難することを申請し、深セン湾港の検疫は香港からのインバウンド客の予約で満員となり受入能力が通常時の上限を大幅に超えています。もともとこの港は香港への中国人観光客の通過点でしたが、今では香港の人々がコロナから逃れるためのチャネルの1つになっています。
※この記事は3月29日の情報を基に執筆しています。

深セン湾港の香港市民

2021年の香港観光市場を振り返って

 今日の香港の観光産業はこれまでで一番絶望的な状況と言えるでしょう。2020年は約356万人が香港を訪れたのに対し、2021年には合計約9万人に留まり97.4%減少しました。2019年の約5600万人と比較すると、さらに途方もないものです。香港は、2019年の民主化デモ活動以来コロナ禍も相まって3年連続で訪問者数の減少を記録しています。

 香港の観光の利点は、その便利な交通手段と十分に発達したサービス産業にあります。しかしながらエピデミックで税関が突然閉鎖され、地元以外の観光客の大多数が入国できなくなりました。香港の観光産業は再開の準備が整っていないと言えます。現在、1700の旅行代理店のうち、100軒が破産し、残りのほとんどは事業登録を保持しているだけで事業を開始していません。

 観光業と密接に関係している小売業、宿泊業、外食産業の失業率は5.4%でした。2019年のデモ活動前は、香港のホテルの月間平均稼働率は約90%に上りましたが、デモ活動後、ホテルの予約数は急激に減少し、平均稼働率が最高でも68%に過ぎませんでした(2019年10月)。その後コロナエピデミックにより香港のホテル業界はさらに悪化し、2020年の初めの月間平均稼働率はわずか29%でしたが、2年後(2021年12月)には72%に回復しました。

 地元の観光客がホテル業界の復活のためにわざわざホテルに宿泊するケースも多くみられましたが、感染したゲストを迎えてしまった場合に、後々の消毒・流行予防がうまくいかず、流行が拡大することもありました。これはゲストだけでなく、ホテルスタッフの安全も問題となっており、ホテルの通常の運営に影響を及ぼしています。

 アジアで最も忙しい航空ハブとして、過去2年間の香港国際空港の運航データも不十分でした。乗客の交通量は2年連続で急激に減少し、2021年には135万人の乗客しか運ばれません。

香港の春の風景


香港のテーマパークの不況

 以前は混雑していた香港ディズニーランドリゾートとオーシャンパークも、長い間閉鎖されました。香港ディズニーランド2021年の営業日数は215日間で、2020年の154日間からは40%増加しました。2021年期の来場者数は前年比64%増の280万人に上り、これらの観光客は全員地元香港の観光客でした。

 2021年9月、香港特別行政区政府は、かつて香港の観光産業の回復に向けて計画された「EasytoHongKong」始動を発表しました。これにより中国本土からの観光客が香港に来ることが予想されましたが、実際には2022年初のコロナ感染第5波が到来したことで、旅行業界の期待は再び破られました。

 長期間の閉鎖の後、香港オーシャンパークはテーマパークから教育パーク、ウォーターパークへの転換を選択し、2021年はウォーターパークのオープンが焦点となりました。これは、アジアで最初の唯一のウォーターフロントウォーターパークであり、年中無休でオープンしています。これは、これまでの香港オーシャンパークの変革における最も重要なマイルストーンでもあります。

香港オーシャンパーク


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