「旅行を売りたければ旅行以外を売る」安定収益を目指すこれからの旅行会社とは―シティツアーズ代表取締役 日比幹氏
多角化戦略が支える経営と雇用
業界全体で旅行業を儲かる産業に
旅行会社ながら、自社のリソースを生かし旅行業以外の事業にも次々と挑むシティツアーズ。2021年には新型コロナワクチン接種の予約受付業務や会場運営業務も数多く受託しており、これらの業務は今期の業績の柱にもなった。「今日の売上が明日の売上にならない」旅行業界において安定した収益を築き上げる同社の取り組みを、代表の日比幹氏に聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)
日比幹氏(以下敬称略) 大学卒業後、旅行業界で12年ほどサラリーマンをやっていました。もともと独立自営を目指していて、就職先を選ぶときも「独立しやすい」という理由で旅行業を選んだんです。旅行や旅行業への思い入れがあったわけではありません。独立してシティツアーズを創業したのは1991年、33歳の時でした。サラリーマン時代は法人営業に携わっていたのですが、一人の営業マンが生み出せる売上には限界があると感じていました。お客様からお声がかかれば、どこでも飛んでいって添乗に明け暮れて、でもそれ以上の生産性が生み出せない。だから、店舗をどんどん展開してみたいという誘惑に駆られていましたね。
以来、店舗数の拡大と人材の確保に邁進して今に至ります。ベースは法人営業ですが、M&Aも行い店舗営業を拡大しつつ、クレジットカード会社の会員向けコールセンター事業も始めました。2016年にはハワイに現地法人を設立、とにかく事業拡大に邁進してきました。現在は、どちらかというと、小規模店舗を統廃合して大きな支店に集約していくという構想のもとで動いています。
日比 今期は、もちろんワクチン接種予約業務のBPOが圧倒的でした。全社的にはこの事業が貢献し、助成金関係を含めて黒字の見込みです。物販事業においても法人営業部門の今期利益の50%を稼いでおり、成果が出ています。
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