「次世代の旅行流通」、その意味と実現への課題は?

業務渡航での法人側の視点

T2RL共同CEOのCory Garner氏

 業界内の連携の観点では、業務渡航における法人側も主要なプレーヤーだが、OnrivaではこれまでのTMCは出張者の約半数が直販などに流れて管理外となっていたとしつつ、今後は逆にAIが会社の規定や社益を守りつつ出張者にあらゆる販売チャンネルでの購入に関してアドバイスできるようになると期待。

 一方、T2RLでは航空会社と法人顧客が本当に必要なコンテンツについて協議して確認すること、その実現を阻害する可能性のあるOBTやTMCとの関係を見直すことが必要になるとの考え。Sabreでは、自前のOBTを含めてそれらの阻害要因を取り除けるよう開発を進めているところだが、そもそも顧客の視点で考えればコンテンツが表示されているのがNDC経由かEDIFACTかそれ以外かなどは関係ないという事実も認識が必要とした。

パーソナライゼーションの未来

 今後のトラベルテクノロジーについての議論で必ず登場するのがパーソナライゼーションだが、顧客に合わせたカスタマイズのためには顧客を知らなければならない。

 顧客について何をどう知っていくべきかの質問に対し、Jafri氏は「旅行者が自ら好みを表明する」「旅行者が事前に表明していた好みと違う選択をした時にAIを活用して理由を探る」「ソーシャルメディア上で利用可能なあらゆるデータから旅行者の情報を収集する」の3通りの方法があるとコメントした。

 一方、Zoghlin氏はパーソナライゼーション至上主義的な議論に警鐘を鳴らした。例えばアメリカン航空の2018年の例では旅客の87%がロイヤルティのステータスを持ってなく、そういった1年に1回しか飛行機を利用しないような顧客に対しては、数多くの情報を提示しようとして混乱させるよりも基本の運賃に手荷物を追加してオファーすれば増収が期待できる、といった程度に留まり、本格的なパーソナライゼーションはごく少数の顧客のみがターゲットになると指摘した。

 このほかGarner氏は、「そのタイミングで顧客に提示するサービスやプロダクトを決定するためのデータ」と「そのタイミングで顧客に提示する金額を決定するためのデータ」の両方が不可欠とコメント。このうち後者については、提示してはいけない金額も判断する必要があり、さらにダイナミックかつ無段階で値付けをすることを考えると今のところ十分なデータが存在していないという。