「次世代の旅行流通」、その意味と実現への課題は?
昨年11月に米国で開催された業界イベント「The Phocuswright Conference 2021」では、atpco、Sabre、航空会社向けコンサル企業トラベルテクノロジーリサーチ(T2RL)、新興TMCのOnrivaの経営者がパネルディスカッションに登壇し、次世代の旅行流通(modern travel retailing)、特に航空券の流通の未来に向けた方策を議論した。
次世代の旅行流通とは
今後旅行業界が実現すべき旅行流通とは何か――それぞれの立場からの考え方を聞いた質問に対して、atpcoのAlex Zoghlin氏は同社が航空券の運賃についてのあらゆる情報を集約し業界内外に提供する立場にあることから「統一規格」が重要と回答。
atpcoは2018年に、航空会社が航空機の内外で提供するサービスについて画像や動画の「リッチコンテンツ」を提供するルートハッピーを買収したところで、航空券の値付けのプラットフォームを運営してさらに旅行者の好みに応じた検索機能を実現するリッチコンテンツを抱える立場であることから、業界の変革を後押しできると自信を語った。実際に、NDCの動きに連動して「ダイナミックオファー」についてもテストとスタンダード化に取り組んでいるところという。
一方、SabreのTraci Mercer氏は、同社がGDSという流通プラットフォームでありながら大きな変化の途上にあることを説明。そして次世代の航空券流通を考える上では航空会社や業界の構造ではなく、旅行者が何を求めるか、そのニーズに対しどのようにパーソナライズするかが重要と指摘した。
続いてVajid Jafri氏のOnrivaは、同士が業界内で創業した8社目の企業。Jafri氏はインターネット以前の世界にOTAが存在しなかったようにAIやNDCが業界を大きく変革するとの予測を示した上で、Onrivaでは顧客が必要とする選択肢やプロダクトを最大限豊富に提供できるプラットフォームの構築を目指していると説明。現在の旅行流通では選択肢が限られるために消費者は多くのサイトを訪問したりリアルの旅行会社に問い合わせたりしているが、Amazonが家電販売のあり方を変えたように旅行流通でも変革が起こせるとの考え。
そしてT2RLは航空会社のテクノロジー活用を支援する立場にあるが、Cory Garner氏にとっては「航空会社と旅行者それぞれにとって望ましいプロダクトを望ましい場面とタイミングで、かつ望ましい値段で提供できること」と説明した。