「次世代の旅行流通」、その意味と実現への課題は?
旅行者のニーズとは
Garner氏の発言を受けて、モデレーターは「実際のところ、旅行者は何を求めているのか」と質問。これに対してatpcoのZoghlin氏は、旅行者といっても多様であるため抽象的にでも「望ましい情報を望ましいタイミングで手に入れて望ましい選択をしたい」と考えるべきだと回答。
その上で、atpcoとしては旅行者の選択を助ける情報に焦点を当て、流通に関わる業者が適切な情報を提供できるようにしていると説明し、GDSの「古い緑の画面」が運賃と経路のみであるのに対し、リッチコンテンツなどの提供によって航空会社が旅行者の選択を手助けできるようにしたいと語った。
実現のハードルは
こうした顧客中心主義はすでに長い間議論されてきたことで、業界全体がサプライヤー、GDS、旅行会社などバラバラに断片化しているために実現は不可能ではないかとの主張もある。
これに対してOnrivaのJafri氏は「問題はテクノロジー」と分析。例えば以前は「ファーストクラスとエコノミークラス」といった区分けであったのに対して現在はエコノミーだけでも複数のフェアファミリーが存在する状況で、さらにそもそも旅行者の志向も把握しなければ提案もできないため、膨大な情報を旅行者に合わせて整理して提供できるのはAIや機械学習によってだと説明した。
また、SabreのMercer氏は、断片化された業界内での連携が鍵となると指摘。他業界の事例やテクノロジーも参考にするべきとしたほか、例えばいくらAIや機械学習を活用しようとしてもTMCのOBTがそのコンテンツに対応していなければ前に進めないように全体的な取り組みが重要との考え。自分たちの事業運営に関わるマインドセットでなく、エコシステム全体について考える必要があるという。
T2RLのGarner氏は航空会社側の視点から、流通には「オファーを生成する能力」「決済を受けるキャッシュレジスター」「流通網」が必要だが、最近のオファーの複雑さに対して旧型のキャッシュレジスターや流通網が対応しきれなくなっていると指摘。そこでIATAのONE OrderやNDCの活用が鍵になってくるとした。逆に、NDCの普及についてはそうした旧型の環境でできていたことを遜色なく簡単にできるようにすることが必要との意見もあった。
なお、NDCについては全体に占めるシェアが2021年に10%となり前年の5%から倍増。ただし10年で10%であり、このままのペースでは本格的な普及までに相当な時間がかかると指摘された。