観光を通じた地域活性化の方針は変わらず、ポストコロナへ戦略的準備を 和田長官

 観光庁の和田浩一長官は、1月19日に開催した業界紙向けの定例会見で、今年度の方針やGo Toトラベルの再開、給付金の不正受給などに関する質問に答えた。

 和田氏は、オミクロン株の感染拡大で観光関連事業者へ更なる影響が懸念されるとしたうえで、「ポストコロナにおいても観光産業は重要な役割を担うため、事業の継続と雇用の維持が必要。雇用調整助成金の特例措置や実質無利子無担保融資による資金繰り支援など、関係省庁とも連携して引き続き支援を行っていく」と述べた。また、Go Toトラベル事業を含む需要喚起策については、感染状況を見極めつつ専門家の意見を踏まえて検討していく方針を示した。さらに、「ポストコロナに向けては戦略的な準備が必要。国内交流の回復や新たな交流市場の開拓、観光産業の変革、『稼げる地域』の実現、国際交流の回復に向けた準備の4つの観点で取り組んでいく」として、引き続き観光を通じた地域活性化を進めることを強調した。

 宿泊事業者の負債額が増加し、旅行会社も倒産や廃業が続くなか、より直接的な支援は検討しないのかという質問に対しては、「宿泊業の経営強化策については有識者を交えた検討会で議論をしている。一方、飲食業に対する補償のような直接的な支援に関しては、営業自粛要請を行っていない点が根本的に異なる。また観光関連事業者は裾野が広く、仮に補償をするとしてもどこまでを対象とするかなど、様々な課題ある」として、今後も事業の継続と雇用の維持、需要喚起策、ポストコロナに向けた準備の3つの観点からの支援を行っていく考えを示した。

 観光立国推進基本計画の改定に関して経団連より提言を受けたことについては、「観光庁の政策と概ね方向性は同じと受け止めた」と述べ、引き続き経済界の意見も聞きながら観光行政を進めていく考えを示した。一方、具体的な策定時期については、「現状では中長期的なインバウンドの動向の見通しが立てづらい。感染状況が落ち着いてから検討を進めていきたい」として明言を避けた。

 HIS子会社によるGo Toトラベルでの不正受給問題については、会見前日にHISからガバナンス改善策の報告を受けたことに触れ、「改善に向けた一定の取り組みが示された。今後は示された改善策が十分に徹底されるかどうか注視していきたい」と述べた。なお、実態のある宿泊がどの程度あったかなどの事実関係については引き続き調査を依頼しており、今月中を目途に報告される予定だという。また、Go Toトラベルの再開に向けては、再発防止策として、不正利用の疑いのある案件の調査対象の拡大、給付金支払い審査の厳格化、審査体制の強化などを行っていく。