需要が戻るまでいかにマーケットを保たせるか―横浜観光コンベンション・ビューロー 青木思生氏(前編)

  • 2022年1月24日

MICEイベントのいま
ターゲティングはリセット、ユニークベニューで再起を図る

-コロナ収束後、インバウンドは2019年度比でどの程度復活すると思いますか。

青木 もし航空料金や各国の感染状況がコロナ前と同レベルに戻るのであれば、訪日需要もほぼ同程度に復活すると思っていますが、複合的な要素があるので予測は非常に困難です。私個人としては、こうした予測にあまり意味はなく、需要が戻ってきたときに受け入れ環境があるかどうかが重要だと考えています。需要が戻るまでどうこのマーケットを保たせていくか、また訪日需要に依存し過ぎず、仮に戻るのがまだ先だったとしても、国内需要を中心に賄っていける体制を整えることが大事ではないでしょうか。

-横浜が狙う客層についてお聞かせください。

青木 LCCで成田に入国する方々は、以前から横浜のターゲットではありません。横浜のインバウンドは年間で73万人泊と、東京と比べると相当少ないのですが、宿泊数はあまり変わらないなかでも観光消費額は増えていました。外国人MICE客など比較的お金を使ってくれる層が横浜に来ていたわけです。

 現在、ターゲティングにおいては、「この国や地域から人を呼ぼう」という考えは一旦リセットし、「横浜を好きになってくれる人、何度も来てくれる人、お金を使ってくれる人は誰か」の観点から因数分解しています。それがたまたま訪日客の場合もあれば国内旅行客の場合もありますが、打ち出すコンテンツは変わらず、表示する言語が変わるだけと考えています。

 一方で、どのような体験が心に響くのかということは、実際にお客様をもてなしてきたホテルや旅行会社の方でなければ分からないので、そうした方々から知恵をお借りしてコンテンツ作りに活かしています。

-コロナ禍中に新たに取り組んだ施策についてお聞かせください。

青木 コロナ以前は、市内の民間事業者が様々な取り組みを行っていたこともあり、YCVBでは修学旅行の誘致を事業の中心に置き、一般観光客にはあまり施策を実施してきませんでした。しかしコロナ禍になり、改めて事業者のリカバリーにも携わろうと、2020年にはGo Toキャンペーンの時期に合わせた横浜独自の割引施策「Find Your YOKOHAMAキャンペーン」を打ち出し、現在も継続しています(※)。
※編集部注:新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、1月25日現在、新規予約は停止中

 また、コロナ禍で変化したマーケットでは、3密回避の観点から人数ではなく客単価を引き上げるしかないと考え、今年度は高付加価値コンテンツの事業開発にも着手しました。例えば本牧の「三渓園」は、第一次世界大戦中に取り壊しを逃れて全国から移築された建築物があり、その歴史的価値とユニークさから研究者の関心も高く、世界の有名ブランドやVIPがお忍びで利用する例もあります。ところが、一般の認知度が低い。そこで入園料700円のところに、いかに付加価値をつけて高価格で販売できるかを考え、実証実験を進めています。具体的には通常営業の終了後、数組限定で、普段は入れない建物で能を見たり、お茶を点てたり、地元の料亭の料理を楽しむというもので、1つ1つを地域の素材で仕立てた企画を考えています。(後編へ続く)