【会計士の視点】新規事業の成功と費用削減のハンドリングの妙、大復活のポイントを柴田社長に聞く-エアトリ編
コロナ大打撃によるピンチから過去最高の利益を確保
ヘルスケア事業は旅行との相乗的な需要を取り込む
ヘルスケア事業についての質問と回答
また他に気になったのが、決算説明資料でも出てきた「ヘルスケア事業」で、これが実際のところ決算にどのくらい影響があったのかというのがあったので、そこも伺いました。
このヘルスケア事業は主に当期から始めたPCR検査事業なのですが、これは決算に影響があったと考えています。具体的な金額は公表していませんが、決算説明資料の19ページでの事業領域別の粗利益の月次推移を書いており、そこで2021年1月からその他事業領域が大きく伸びた要因がこのPCR検査です。
このヘルスケア事業については、コロナの感染が拡大すると、旅行領域の売上は減少する一方で、PCR検査の件数が増えてそちらの売上が増えるという補完的な効果が一つありました。それ以外でも、今後についてはより積極的なPCR検査需要もあると考えており、例えば出張や旅行前の検査や、あるいは今後海外との国境が開いてくると海外旅行のために検査といった需要も出てくると考えられます。
この点については、ヘルスケア事業で思った以上に利益が出ていた点に驚いたことと、また筆者としてはヘルスケア事業を「コロナ感染拡大のリスクヘッジ」という視点でしか見ていなかったので、この「コロナがある程度収まった後の、旅行との相乗的な需要」という点がかなり興味深く、今後の事業展開についても質問しました。
今後については、今以上に店舗を増やすことはあまり考えておらず、航空会社や旅行会社と提携して、旅行との相乗的な需要を取り込みたいと考えています。
また、PCR検査以外でも、例えばコロナ陽性になってキャンセルせざるを得なくなった時の保険サービスの提供などを考えています。現在においては、GoToキャンペーンが再開されるか不透明な中、もし旅行時点でGoToキャンペーンがあれば後から割引ができるサービスを取扱っています。
ヘルスケア事業まとめ
- 2021年9月期から始めたPCR検査事業は具体的な数値は非公開であるものの、大きく利益に貢献をしている可能性がある
- PCR検査は「コロナ拡大の際のリスクヘッジ」のみならず、「旅行需要回復とともに相乗的に需要が伸びる」可能性もある
- 今後は航空会社や旅行会社と提携して「旅行との相乗的なPCR検査」を伸ばしつつ、また他にも保険サービスなども拡充することを検討している
以上が2021年9月期決算について取材させて頂いた内容とその回答でした。コロナ禍で旅行業自体が大きく落ち込む中で、GoToトラベルというチャンスをものにしつつ、さらにはPCR検査という新規事業の成功、費用削減の実行と、非常に上手くハンドリングした結果、過去最高益を確保できたことが分かります。
会計士の視点
- 売上高や粗利益については、国内需要が底堅く、GoToトラベルやその後のリピーター確保できたことにより、売上高は若干減少、粗利益は微増程度となった
- 人件費や広告宣伝費を大きく削減したが、2018年から19年にかけての大規模マーケティングによる認知度の向上もあって、売上高はある程度確保することができた
- 2021年9月期に始めたヘルスケア事業が好調で、今時点では「コロナで旅行需要が落ちた時の補完性」が強いが、今後は「旅行や出張とセットのPCR検査」等、相乗効果的な需要も取り込みに行き、他にも保険サービス等を拡充させる予定
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東京大学経済学部卒業後、大手監査法人、コンサルティング会社を経て、現在は玉置公認会計士事務所に所属。監査業務の他、非上場会社の株価算定やデューデリジェンス、企業へのコンサルティング、決算支援、再生支援等をおこなう。