【シンガポール現地レポート】エンデミックを突き進む小国シンガポールの今

  • 2022年1月25日

経済活動

 シンガポールの経済状況は、2021年は2020年に比べ回復傾向にあると言えると思います。2021年の第4四半期のGDPは、オミクロン株の発生の影響を受けたものの2020年同時期に比べ5.4%高く、2021年全体で6%から7%ほど改善する見込みのようです。小国都市国家シンガポールがいち早くコロナと共存する道を選んだのは、経済回復を最優先する固い意志の表れだったと考えられます。

 シンガポールの旅行業界もまだまだ本格的な回復には程遠い状況に変わりはないですが、ウィズコロナとワクチンの普及で、ビジネスやレジャー利用が少しずつ戻っているようです。

 2020年から人道的な理由でしかフライトを運航していなかった航空会社も路線やフライト数を増やしてきており、少しずつですが回復への道が見えつつあります。シンガポール航空(SQ)は水際対策の規制緩和に伴い、VTL(Vaccinated Travel Lane)Flightsの運航を開始しています。VTL Flightsとは、ワクチン接種済みを証明できる搭乗者が指定のVTL Flightsに搭乗すると、一定条件の下、特定の国からシンガポール到着後に隔離無しで入国できるというスキームです。SQは2021年12月現在で約20カ国にVTL Flightsを展開しています(残念ながら日本はまだ対象外)。

 居住者視点で見ると、シンガポールから他国へ出国する場合は当然渡航先の水際対策の規制に従う必要があるのですが、タイなどのように渡航先も一定条件の下で隔離無しの滞在が認められている場合、往復共に隔離無しで移動ができるということになり、このコロナ禍で大胆で画期的な取り組みです。私の周りでも、既に隔離無しで国外への出張、里帰り、レジャー旅行をする人も出てきました。ただし、現在はオミクロン株の感染急拡大により、シンガポールにおけるVTL Flightsの販売は1月20日まで一時停止されています。

解体されるSQのワイドボディの機体(2021年10月頃チャンギ国際空港付近で撮影)。30年以上の歴史がある傘下のシルクエアーを統合したりと、ポストコロナに向けて変革が起きています。

国内のホテルの状況

 さて、シンガポール国内のホテルの状況も見ておきましょう。国内ホテルの稼働率はワクチンの普及とウィズコロナへの方針転換がされた2021年9月頃から回復傾向にあるようです。上記の水際対策緩和に連鎖して、シンガポールへの入国者も増加傾向にありますので、ホテルもその恩恵を受けるのは当然の流れだと考えます。昨年11月には76%まで回復してきており、これはコロナ前の水準と比べても10%弱しか変わらず、ポジティブなニュースではないでしょうか。

 データが見当たらなかったので私見にはなりますが、この稼働率の押し上げ要因のもう1つは、シンガポール全体の消費熱と旅行熱が国内ホテル宿泊(ステイケーション)に需要が集中しているという点です。東京23区程度の面積しかないシンガポールには、国内旅行というレジャーは存在しません。旅行と言えば必ずシンガポール国外への海外旅行でしたので、この2年間全く自由に旅行できていないシンガポール人や里帰りができない外国人居住者の旅行意欲はこれまでになく非常に高いと考えられ、その需要が国内ホテルへ向いても不思議ではありません。仮にもし東京23区からの出入りが2年間禁止されたら、旅行好きな読者の皆様も都内のホテルでのステイケーションを検討されるのではないでしょうか?

Singapore Tourism Analytics Network (Stan) より引用

 2021年は日本もシンガポールも変わらずに厳しい年でありましたが、政策、医療、経済等、様々な面で進歩が見えた年でもあったと思います。最近では飲み薬の開発と承認も着々と進んでいるようですし、2022年は更に明るい光が差し込むことを切に願っています。自由に海外旅行ができるのはまだ先になりそうですが、それまで国内旅行や新たなレジャーで楽しみながら乗り切りましょう!