超難問の旅行業務取扱管理者試験は受験生に何を期待しているのか?-RT Collection 柴田真人氏寄稿
一方で総合旅行業務取扱管理者試験では、受験生の中でも話題になった超難問がいくつかありました。
1つ目は、JR運賃計算の1つに「特定都区市内」の計算がありますが、令和3年度の問題では特定都区市内の駅から出発し、その都市の外を経てから再びその特定都区市内を通過する場合の運賃計算問題が出題されました。JR運賃計算が得意な人は、これが例外のさらに例外ということがわかると思います。この運賃計算は特殊で、おそらくどの参考書にも載っておらず、多くの受験生が間違えたと思います。
2つ目は、海外から携帯輸入して物品を持ち込む問題でしたが、物品のグラムまで確認しなければならない問題で、通関士になるための試験問題のような内容でした。選択肢には、黒トリュフ25グラムの瓶詰め2個、フォアグラのパテ100グラムの缶詰め3個、チョウザメのキャビアの瓶詰め125グラムという選択肢があり、受験生は試験中にとても戸惑ったのではないでしょうか。受験対策では、物品が輸入禁止品または規制品に該当するかどうかまでしか勉強していないと思われ、輸入禁止品または規制品のグラムまではさすがにカバーできていなかったと思います。
3つ目は、海外の空港から市内へ走る列車に関する問題です。今回の試験では、上海の浦東空港から市内に行くリニアモーターカー、ソウルの仁川空港から市内に行く鉄道、台北の桃園空港から市内まで行く鉄道が出題されました。日本でいうと羽田空港に行く東京モノレール、成田空港に行く京成スカイライナー、関西空港に行くJRのはるかを問うような問題です。海外にある空港発着の鉄道を覚えることは、今後膨大な量の試験対策が必要になります。主要都市の空港だけでも20から30前後あるのではないでしょうか。
その他ではMCT(ミニマム・コネクティング・タイム)の問題がなくなる一方で、ESTAの諸条件が問われる問題も出題されています。
このように令和3年度の総合旅行業務取扱管理者試験では、特に国内および海外旅行実務の問題に難問が多い印象でした。コロナ禍で旅行業界から人材が失われている中、今年は合格者を増やすために比較的解きやすい問題が多くなるのではと予想していましたが、総合旅行業務取扱管理者試験に限っては旅行業務の範疇を超えている問題もあり、合格率が下がる可能性が高いと思われます。
旅行業務取扱管理者試験は何を受験生に期待しているのか、そんなことを考えさせられる令和3年度の試験でした。
年明け以降、令和4年度の国家試験合格を目指して試験勉強を始める人が増えてくると思います。引き続き、受験生のフォローをしていきたいと思います。
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。