地域に分け入るJAL社員たち ~秋田県編~

  • 2021年12月22日

CAから「ナマハゲ伝導士」へ!?
ブランド力の磨き上げ、年間30回の入山も

 客室乗務員や業務企画職など、幅広い職種の社員が各都道府県の自治体等に出向している日本航空(JAL)。シリーズ「地域に分け入るJAL社員たち」では、出向者と自治体の担当者、それぞれの目線で地域の魅力や課題、相互への期待などを語っていただくことを通して、ポストコロナに向けた地域創生を考えていく。

 第3回は、秋田県内で客室乗務員や旅行業界での経験を活かして活躍する3人と、各自治体の皆さんに話を聞いた。

秋田県庁

観光文化スポーツ部 渡邊恭子さん

入社4年目で、JALでは客室乗務員として国内線及び国際線に乗務していました。また、昨年度は社内ベンチャーチーム「W-PIT」にも所属し、地方創生に関わるビジネスの提案を行いました。その中で地方自治体の視点から観光に携わってみたいと感じ、秋田県庁に出向することになりました。

現在は、観光文化スポーツ部の広報広聴業務、県の観光計画である「秋田県観光振興ビジョン」の作成等の業務をはじめ、秋田空港・大館能代空港のPR業務や客室乗務員の知見を生かした宿泊事業者を支援するための新事業を進めています。また、「ナマハゲ伝導士」と「あきた発酵伝導士」を目指し、秋田の魅力発信に勤しんでいます。

-住んでみて初めて知った地域の特色や、お薦めの観光素材はありますか。

 地域の人々の温かさです。先日、田園風景の広がる小さな集落で農家民宿を営んでいる女性とお話しする機会がありました。田舎の雰囲気を感じてほしいと、玄関に大根を飾って迎えてくださり、手作りのいぶりがっこや裏山で採れたクロモジ茶を振る舞っていただきました。宿泊される方の気持ちに届くような工夫が随所に感じられ、細やかな気配りがとても印象的でした。

 また、個人的なオススメは湯沢市の三梨牛です。地元産にこだわった飼料と栗駒山系の湧水を利用して飼育された黒毛和牛で、A4等級以上のもののみが三梨牛として認定されます。肥育農家は10軒未満で県外に出回ることはほぼありませんので、三梨牛を食べるためだけでも訪れる価値は十分にあると感じます。

-出向して最も解決したいと感じた課題は何でしょうか。

 業務を通して県内の宿泊施設を訪問しましたが、スタッフの方の温かなおもてなしの心、きめ細やかな優しさが溢れるサービスは素晴らしいと感じました。そこで、提供するサービスを客観的に見る機会があればより一層磨きがかかるのではと考え、県内宿泊施設全体のサービス品質と顧客満足度の向上を目指す「宿泊施設モニター事業」を立ち上げました。宿泊事業者の方々に問題と感じている点を予め伺い、県庁に出向している客室乗務員が現地でモニターを行った後に改善提案を行うという事業です。10月から事業を開始し、11月現在、6施設でモニターを実施しています。

-今後の需要回復も見据えて、コロナ後はどのようなターゲットにどのような商品・素材を紹介していきたいですか。

 角館の武家屋敷の桜、大館市の十ノ瀬藤の郷、男鹿の雲昌寺のアジサイ、由利本荘市西目のひまわり畑、千秋公園に咲く蓮の花、秋田国際ダリア園等、四季折々の花々が1年中楽しめる秋田県には、フラワーツーリズムの可能性を感じています。インバウンドのお客さまにも是非、日本の四季の美しさを秋田の自然を通じて知っていただきたいと思います。また撮影会などイベントの開催も進め、秋田の花の魅力を積極的に発信していきたいと思います。

観光文化スポーツ部 観光戦略課 大門英明さん

入庁29年目ですが、観光部門には昨年初めて配属されました。配属が決まった4月には「観光といったら県外への出張も多かろう」とスーツケースを新調しましたが、新型コロナウイルスはその後も拡大を続け、まだ仕事で使ったことはありません。

現在は主に「秋田県観光振興ビジョン」の策定を担当しています。コロナ前から顕在化していた多様化する旅行ニーズへの対応やデジタル技術の活用、SDGs達成への貢献など、今後の観光振興の課題を捉えつつ、アフターコロナを見据え「持続可能な観光」を目指して、「何度でも訪れたくなるあきたの創出」を図るための指針であり、当部一丸で進めています。

-観光資源やお薦めの食、特産品などをご紹介ください。

 いずれも県境にありますが、十和田・八幡平、栗駒山、鳥海山などの眺めは素晴らしく、特に紅葉の時期がお薦めです。また、本県は日本海に面しているので、空一面が茜色に染まりながら沈んでいく夕陽も堪能できます。男鹿半島が有名ですが、個人的には雄物川に架かる秋田大橋のたもとから、河口に沈む夕陽を見るのもお薦めです。

秋田大橋のたもとからの夕陽。オレンジからブルーに変わる場面は絶景です。

 食で外せないのはお米。11月には高級ブランド米「サキホコレ」もデビューしました。また、横手のりんご、鹿角の北限の桃、男鹿や大館の梨、湯沢のさくらんぼなど、おいしい果物もたくさんあります。

-地域が抱える課題や目標、それに対する取り組みについて教えてください。またその課題のなかで、JALからの出向者の方に期待することは何でしょうか。

 観光が持続的に発展していくには、観光産業が「稼ぐ力」を持つことが重要だと考えています。これまではとにかく沢山の人を呼び込もうとキャンペーンやプロモーションに力を入れてきましたが、1回訪れて終わりでは産業として持続していきません。リピーターの獲得、ロイヤルカスタマーの創出が求められます。その点でJALからの出向職員の方々には、県外在住者として、また民間企業従事者としての新たな視点で本県の観光を見ていただきたいですし、特にこれからの観光需要を担う若い世代の方々には、様々なアイデアを提供していただけたらと思っています。

-今後の需要回復も見据えて、コロナ後はどのようなターゲットにどのような商品・素材を紹介していきたいですか。

 今年7月に世界文化遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」です。4道県に跨がる遺産のうち、本県には鹿角市の大湯環状列石と北秋田の伊勢堂岱遺跡の2つがあり、特に大湯環状列石は、三内丸山遺跡と並んで特別史跡に指定されています。是非、全国に何万箇所とある縄文遺跡の中からなぜ世界遺産に登録されたのかや、縄文人のサステナブルな生活ぶりなどに思いを馳せながら訪れていただきたいと思います。

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