観光の力で地域とともに北海道を元気に-北海道エアポート代表取締役社長 蒲生猛氏

コアなFITの誘客で長期滞在やリピーターの創出を
道外からの新しい人、情報、資金の活用も模索

 新千歳、稚内、釧路、函館、旭川、帯広および女満別の北海道内7空港をコンセッション方式で運営する「北海道エアポート」。空港施設の管理だけでなく、国内外から北海道全域に送客する「マルチ・ツーリズムゲートウェイ」を目指して、空港を基点とした地域活性化にも取り組んでいる。しかし、他の空港と同様にコロナ禍の影響で、国内、国際線とも発着便数が大きく減少し、北海道の基幹産業である観光はかつてない苦境にある。今後アフターコロナに向けて、どのように空港運営を行なっていくのか。また、回復の見通しは。同社代表取締役社長の蒲生猛氏に話を聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

北海道エアポート代表取締役社長の蒲生猛氏

-北海道エアポートのご紹介をお願いいたします。

蒲生猛氏(以下敬称略) 所有権を国や自治体に残したまま運営権を民間に売却するコンセッション方式で2019年の8月に設立され、同年10月に実施契約を締結。事業は2020年1月から開始しました。事業範囲は、空港運営事業、ターミナルビル事業、駐車場事業などで、事業期間は30年間になっています。

 他の空港でも同様のコンセッション方式で運営されているところがありますが、北海道エアポートの特徴は、道内7つの空港をまとめて運営しているところです。当初は新千歳だけで話が進んでいたようですが、国管理の空港が他に3つあり、その他の空港についても地元自治体や経済界から強い要望があったことから、最終的に7つの空港のコンセッションに決まったという経緯と聞いております。

-蒲生社長ご自身の自己紹介もお願いいたします。

蒲生 1981年に運輸省に入省し、35年ほど務めました。主に成田、伊丹、福岡などの空港で騒音・地元対策関係の仕事に就いたほか、東京航空局東京国際空港事務所長、大阪航空局長も務めました。また、航空局交通管制部長など管制の仕事にも携わりました。2019年の設立から現職です。これまでの経歴から、飛行機がどのように上空を飛んで、それが音となって地域にどのような影響を与えているのか、などへの対応が中心だったように思います。

-これまでのコロナ禍による道内空港への影響はいかがですか。また、今年度はどのような見通しを立てていらっしゃいますか。

蒲生 新千歳空港の2020年度の離着陸回数は2019年度比で48%に落ち込み、全国で6番目の規模になってしまいました。利用客数で言うと、2019年度の約2280万人から、その3分の1の640万人台まで減少しました。

 今年度については、昨年度ほど悪くはならないだろうとの予測のもと、2019年度の3分の2ほどの回復を見込んで事業計画を策定しました。しかし、第5波の影響で、現状では2019年度の半分まで回復すればいいのではないかとの見立てとなっています。相当しんどい状況です。

 直近10日間(11月中旬)を見ると、離着陸回数は2年前の85%ほどに回復し、搭乗率も64%ほどになっていますが、問題は年末にかけてどれくらい戻るかです。離着陸回数で90%、搭乗率で70%ほどまで回復し、来年3月末までに搭乗率80%近くになればと願っていますが、それでも今年度前半で大きな傷を負ったため、事業計画の当初目標達成には届かないと思います。

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