海外旅行大手3社が見据える企画旅行の未来、注力する方面やセグメントは?-JATAインターナショナル・ツーリズム・フォーラム2021
JTB、HIS、阪急がコロナ後の海外旅行トレンド予想
再開時期やOTAとの共存戦略も
商品体系の変化-添乗員付き周遊商品VSダイナミックパッケージ
続いての添乗員付き周遊型企画商品とダイナミックパッケージ(DP)の行方についての質問では、当然ながら3社ともDPの継続的な成長を予測しつつ、添乗員の同行する商品の可能性も強調した。
こうしたなかで阪急交通社は、再開後には感染時やロックダウンなどに添乗員が対応できる「安心・安全」や、供給不足による価格の上昇の観点から「添乗員付き商品を選択するお客様が主流になる」と予測。
またHISはDPについて、「海外航空券は得意分野でもあり強みを発揮できる」と自信を示したうえで、今後は顧客の細かいニーズに合わせたUIやUXの改善、システムの強化が必要になると予測。一方の添乗員付きツアーについても「コロナ後に旅行会社らしさを出せる商材で、強化したい」といい、「後発であるため、いかにオリジナリティを出していけるかが成長のカギになる」とコメントした。
JTBは、DPについて「航空とホテルの組み合わせだけで『旅』は完成せず、また選択肢が増えると最良の旅の体験を選びにくくなる」と指摘。そして、「我々は旅行会社でありホスピタリティの会社。DPを流通手段で終わらせることなく、それぞれの『旅の目的や感動ポイント』を予算内で最大限実現させる」ためのツールとして使うこと、そのために現地サポート体制やタビナカの提案が重要になるとした。添乗員付き商品も同様に「個人の旅行では実現できない提案・体験」を重視して進化を目指し、特に欧州のランドクルーズをその好例と紹介した。
3社ともハワイや欧州に注力、サステナビリティも
再開後に注力するデスティネーションについて阪急は、「感染拡大が収まっている」「訪問時の隔離がない」「ホテルや観光施設、レストラン、商店、交通機関が正常に機能している」「感染防止対策が十分に施されている」「医療機関がしっかりとしている」ことが重要と列挙し、人気も考慮してハワイ、台湾、韓国、欧州などから回復すると予想。
一方、HISはワクチン接種率や受け入れの姿勢から欧米などの長距離方面とハワイやグアムのようなリゾート地が中心になると分析。豪州も国境開放が当初想定より早く進んでいるとした。
JTBは、「ハイバリュートラベラー」が重視する旅行体験を実現でき、同時に文化や環境、コミュニティなどの面で持続可能性を目指せるデスティネーションに注力する方針を説明。具体的にはハワイやカナダ、欧州で、例えば自然をテーマにしたツアーでも、ただ見て美しいだけでなく地域に根ざした地元ガイドとのハイキングやアクティビティ体験を盛り込み、さらに地域ごとの特産品を地産地消する体験や、訪問先の歴史や文化に共感できるようにするための事前セミナーなどの工夫を重ねたいという。
OTAとは共存?差別化?
ディスカッションの最後には「OTAとの共存/差別化」についても聞かれ、阪急交通社は「OTAとリアル旅行会社で、顧客層の違いがより鮮明になってくるのではないか」と予測。安心感を求める層はリアル旅行会社を、そうでない層はOTAを選択する形で棲み分けをすることになり、差別化についても逆にコールセンターや現地事務所、危機管理対策、入国用書類やワクチンパスポートの取得補助など、「リアルならではの『安心感』」を強調したいという。
JTBは、OTAは「多様化するお客様のニーズを満たせる品揃えが非常に魅力的」としたうえで、DPについての回答と同じくOTAの商材を活用して顧客に合わせた提案をするべきだとした。また、「我々の海外拠点が開発する着地型コンテンツを流通してもらう」可能性もあるとの考えだ。
このほかHISは、「自社だけではカバーできない国・エリアや、契約の難しい小規模なホテルなどの手配手段として効果的に共存できる」とコメント。そのうえで差別化については、出発前から帰国後までの流れのなかで「いかにして『人』が介在し、より顧客満足度を上げられるか」が重要とした。
そしてそのために、国内外で300超の拠点に勤務する社員が力を発揮し、更に紙パンフレットの役割見直しなども通して、「日本の旅行会社が生み出すパッケージツアーの良さ、安心感をしっかりと強みとして伝えていきたい」という。