海外旅行大手3社が見据える企画旅行の未来、注力する方面やセグメントは?-JATAインターナショナル・ツーリズム・フォーラム2021

JTB、HIS、阪急がコロナ後の海外旅行トレンド予想
再開時期やOTAとの共存戦略も

 諸外国ではワクチン接種の進展を受けて往来再開が進むなか、日本でも観光は除外されているもののようやく入国時の隔離が3日間に短縮され、今後の進展に期待がかかるところ。日本旅行業協会(JATA)の「JATAインターナショナル・ツーリズム・フォーラム2021」で11月1日に実施された「ウィズコロナ時代の新しい企画旅行のカタチ」のパネルディスカッションでは、JTB、HIS、阪急交通社の3社が往来再開後のツアーのあり方について意見を交わした。

(左から)古澤氏、古川氏、中山氏、浅見氏
【パネリスト】
JTB 海外仕入商品事業部 欧米部長
浅見雄介氏
エイチ・アイ・エス 個人旅行営業本部商品戦略グループリーダー
古川裕之氏
阪急交通社 取締役執行役員国際旅行営業本部長
中山鉄男氏
【モデレーター】
JATA国際センター所長 古澤徹氏

往来再開、「早ければ年末年始にも動き」

 最初の質問は各社の現況で、3社とも影響は当然甚大。そのなかで、HISは国内旅行やオンライン体験、さらに新規事業など「今できること」に風力するとともに、「海外旅行の再開をあきらめず、コロナ禍であっても継続して海外旅行商品を造成・販売」していたという。そして、現在は海外旅行再開の期待も少しずつ高まっており、「ゆるやかではあるものの確実に海外旅行需要は回復してくる」と期待。特に「年末年始に関しては、多少動きがあるのではないかと期待している」とした。

 一方、阪急交通社では、緊急事態宣言の解除に伴って「国内旅行が活況を呈しており、会社の資源をそちらに集中している」ところ。海外旅行の再開の見通しについてははっきりとは見えていないとしつつ、「希望とすれば来年度、春先ごろから徐々に回復して夏の商戦を迎えられれば」と期待を語った。

 また、JTBも、感染症危険情報のレベル3以上の国については手配旅行を含めて海外旅行の取り扱いを停止。しかし今後は世界の人流が戻り始めていることもあり、日本も国内旅行の活発化とともに海外旅行の意欲も高まっていくと見ているという。再開の時期については、「訪問先の危険度が下がり、日本帰国時の隔離が緩和される」ことを前提に「来年の早春には一部方面から再開できる」と期待しているとした。

再開後の海外旅行を牽引する客層は?

 回復期の需要動向をどう予測するかについては、HISは20代、30代が積極的で60代以上のシニア層は慎重姿勢という調査結果を持っているといい、再開直後には「時間と経済的なゆとりがある層」「ハネムーナーなど明確な目的意識のある層」「感染リスクを押さえるために近親者で旅行するファミリー層」「FIT層」が動くと予想した。

 これに対して阪急交通社は、同社が得意とする熟年層が最初に動くと想定。理由としては、「すでにワクチン接種を終えている割合が高く、コロナ前にも海外旅行に積極的だった」「再開後しばらくは航空座席が不足することなどにより業界全体で旅行代金が上昇すると見込まれ、お金と時間に余裕のある熟年層が動きやすい」と分析した。若年層については修学旅行から動きが出ると見ているという。

 JTBは3月にJTB総研が発表した調査結果で、過去3年以内に欧州・北米など長距離の旅行を経験した層は他よりもモチベーションが高かったことを紹介。コロナ後に海外旅行回数を増やしたいとの回答が3割を超えるなど海外旅行への意欲自体が高いことから、JTBではこの層を「ハイバリュートラベラー」と呼び、この層のニーズに合った旅行、具体的には「価値観を変えるような異文化との遭遇や人生観を変える絶景、訪問先での心の繋がりなど、物質面よりも自己成長や精神的な充足を得られる」旅行が重要になるとした。

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